うまい両立

犬狸

第1話

喉から鼻に抜ける香り、舌に絡みつく甘味。

疲れもこれからの頑張りにも効いてくれるのと柔らかくとろける表情を浮かべる姿に微笑み返す。

甘ったるくてどうしようもない思いに酔いしれる、

なんてことはしたくないけれど、突き放しも手離すこともできず何度もこの時間を作りこの状況を甘受している。

酔いも至福も嗜む君に溺れてしまうことも、この関係を良しとし噛み締めることもできず、ただ怖気付くだけの私が君の好むものには成れやしないだろう。

そんなことを考えてるとは気付くこともなく、目に映る君はどんどん艶を滲ませ潤いを増していく。代わりに私の中は渇いて渇いて。求めそうになるものを誤魔化すつもりで呷ったアルコールは求める気持ちをさらに煽って。

酔いにまかせて甘い言葉でも出てくれば少しは楽しめるのか。

上がった体温を溶けた氷で覚ました。


また覚めてしまう、もうすぐ楽しみにしていた時間が。

甘い考えに溺れることも、仕事とプライベートどちらかに偏る生活になるわけでもない。両立して節度まで。

欲ばかり頬張る私は、その二つに成り代わることはできそうにない。バランス良く整った中に入り込んでもふらつく私がバランスを均衡を崩してしまう気がして、いつも甘えをお酒に溶かす。それでも心地良い空間に酔いしれて覚めた時にまた恋しくなる。

飲み込む刺激に緩む口から溢れる言葉、上がる体温を教えるグラスの冷たさ。

疲れにもこれからの頑張りにも効くの。この至福に酔う為の糧になる。


うまく、付き合いたい。


もっと、うまく。

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うまい両立 犬狸 @inudanuki97

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