最終話 夢と希望の結末

「おい、フワフワをどうした! 悪夢の王!」


 青と白の大空に叫んでも特に返事はない。ただ緑の草原に自分の声が響くだけ。


「一人で考えるしかないか」


 どうしてフワフワは落とされたのか。何を言おうとしていたのか。それは悪夢の王の正体だ。悪夢の王の正体を暴くことができれば、本当に勝つことができるのか?


 フワフワは自分を勝たせようとして、夢に堕とすという目的に反したから使い魔をクビになったのかもしれない。そこまでして、勝たせたかったのか。


 それにしても、自分の気持ちはどうだ。最初は確かになんとなく、悪夢の王を倒したいと思っていた。だけど「いっそ、夢に堕ちても」その気持ちを思い出してからは、倒したいというより、ただ夢中になる感覚だった。それこそ夢に堕ちていくみたいに。


 今も、悪夢の王を倒してしまえば、この世界は夢から解放されてしまう。目覚めてしまう。そのことに怯える自分がいる。


 本当にフワフワから見て自分は、悪夢の王に勝ちたいように見えていたのか? そういえばフワフワは言っていた。


(夢の世界では見たものなんだって真実になる。だから私、ウソはついてない)


 ウソはついてない。だとしたら、こうも言っていた。


(悪夢の王が、この世界を夢に縛りつけている。キミが解放するんだ)


 解放できる力が、この手にはある。じゃあ後は、悪夢の王の正体。それはもう、自問自答する中でわかってきた。正体がわかっていれば、きっと呼び出せる。


「いでよ、悪夢の王!」


 暗雲が立ち込め、もはや草原以上に見慣れた気がする風景が目の前に広がる。手の中のゴボウを強く握る。


「悪夢の王の正体は、夢に堕ちたいと思っていた自分自身!」


 そう見破ったつもりで叫んでも、目の前の暗闇は広がっていく。

 このままではまた同じ夢を繰り返してしまう。

 でもフワフワがもういない。

 ここで負ければもうコンティニューはなく、永遠の夢に囚われてしまうかもしれない。


 そんな状況で、どこからか不思議な力が流れ込んでくる。その力は一つから始まり、レベルと違ってマックスはない、無限の可能性を感じる!


「うぉぉぉぉぉ」


 悪夢を打ち破ろうとするこの手に、夢が宿る。手に持ったゴボウは素手となり、この指が希望に満ちた物語を描くように、悪夢の王を切り裂いていく。






 そして晴れた世界。いつもの草原。


「おかえり」


 地面にへたりこんでいた大きな綿ぼこりは、再び輝きを放ち、大きなたんぽぽの綿毛に戻る。そしてフワフワとゆっくり宙に浮かび上がる。


(私は、キミの夢と希望を信じてる)


 そう言って、バーッと無数のたんぽぽの綿毛が大空に飛び立っていった。



 見届けると夢の世界から解放され、いつもの部屋で目覚めた。忘れる前にこの夢オチファンタジーを描いた。


 悪夢の王を倒した自分の夢は、この夢で見た小さな物語を誰かに見てもらうこと。キミが見てくれなかったら、それは永遠に叶わない。


 キミの力で、夢と希望を叶え、悪夢の王を倒すことができた。


 ありがとう。



(めでたし、めでたし)

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YUMEOCHI FANTASY FUWAFUWA 浅倉 茉白 @asakura_mashiro

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