第5話 この夢の正体

 フワフワの真実を知り、この世界の仕組みに気づき、それでも悪夢の王に挑み続けた。


「要は悪夢の王に何度も挑み、やられていくことで、どんどん夢に堕ちていくってわけだ」


(そうだけど。正気? もう百回くらいになるんじゃない)


「そっちからしても、望み通りなんでしょ。何が狙いか知らないけど」


(こっちはもう、目的を果たしたも同然。でもキミがそんなにやる気あるのが意外。本当は悪夢の王を倒したいと思っているんじゃないの)


「さあ。でも確かにどういうわけか、やる気はある。さ、また悪夢の王を呼び出してくれ」


(ちょっと待って。このまま挑み続けても、勝つことはできない)


「はあ? そりゃそっちがそういうふうに仕組んでるんでしょ。当たり前じゃん」


(でも勝つ方法がないわけじゃない)


「そうなの?」


(あ。これに食いつくってことは、やっぱり勝ちたいんだ)


「いや、さっきからおかしなこと言うから」


(私はキミの態度を見て感じるの。夢に堕ちたいとか言ってても、何度も挑む姿はそういうふうに見えない)


「えぇ、そうかなぁ」


(もしかして、勝つことを"夢見てる"んじゃないの)


「そんなダジャレみたいな」


(あるいはその心に、本当は夢や希望が隠されている。ねぇ何か趣味はないの)


「ゲームとか読書とか?」


(それで何か挫折したことはある?)


「ゲームとか読書で?」


(うーん。ちょっと違うかもしれないけど。何か叶えたいけど叶わない夢とか、希望とか)


「そりゃ、なかったらここでこんなことしてないかもな」


(それ! きっとその夢や希望が目覚めれば、キミは勝って目覚める。どうしてなのか知りたいでしょ)


「まだ何も言ってないけど」


(だって悪夢の王の正体はね)


 次の瞬間、フワフワは草原に落下した。大きな綿ぼこりの形はそのままに、何も言わなくなった。

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