第3話

図書館の後、秋服を見にしばらく服屋を彷徨いセールにつられて数着買ってしまった。




奈々江は元々買い物が好きで、一度店に入ると暫くブラブラしてしまう。

前に万歩計をつけて歩いてみたら、1日で2万歩近く歩いていた。


さすがにそんな日は疲れてしまって、途中で軽く食べて帰る。でも、あんこは欠かさずに食べる。疲れたからこそ甘い物なのだ。




服屋の後はスーパーに寄り、次々と食材をかごに入れる。あんこに使う寒天も忘れずに入れた。

(遅くなったから弁当買って帰るか。)


弁当コーナーに行くと、迷って決められないのかウロウロと行ったり来たりしている男性がいた。


(気持ちは分かる。色々味を想像すると、決められなくなるんだよね。)


男性の邪魔をしないように、奈々江も弁当を選び始める。

ほとんどの弁当が20%オフになってて、心の中でガッツポーズをする。


(無難にこれにしようっと。)


手を伸ばすと、さっきの男性も同じ弁当を掴もうとしていた。


「あっ。」

ビックリした奈々江はつい声に出してしまった。


「え?」

男性の顔を見ると、さっきの図書館の男性だ。


「どうも。さっき図書館であんこの本借りてましたね。」

「あ、はい。そうです。あんこ好きなもんで…。」

「やっぱりそうですか。」

「え?」

「すみません。俺もあんこ好きで、あの本持ってるんですよ。」

「そうなんですか?偶然ですね。」

「自分でデザート作ったりするんですか?」

「はい。本見ながら、材料揃えて休みの日はよく作ってます。毎日食べてるけど全然飽きないんですよね。それくらい大好きです。」


奈々江は嬉しくて顔がほころぶ。

(こんな近くに真のあんこ好きがいたとは。奇跡かもしれない。)


勇気を出して切り出す。

「あの…良かったら今度一緒に、あんこの探索に行きませんか?」




初めてのデートから奈々江と梅野が付き合うようになったのは、そんなに時間がかからなかった。




今でもご飯の後のデザートは2人であんこを食べてる。最高に幸せ。

梅野君の幸せそうな顔を見るのも楽しい。


最後に1つだけ惚気てもいいかな。

私が機嫌悪いとき、梅野くんが作ってくれる「あんこクレープ」が最高に美味しいんだ。

生地にあんこが練り込んであって、クレープの中身は抹茶アイスと生クリーム。美味しすぎて一瞬で機嫌が直っちゃう。



これだけははっきり言える。

あんこ好きには悪い人はいない。

間違いない。

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あんこ好きに悪い人はいない 雨上がりの空 @ccandyy

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