愛のためなら二刀流
星谷光洋
愛しているから誰にでもなれる
私は、マヤが住んでいるマンションの近くをうろうろとしていた。
ずっとマヤに恋焦がれていた。居酒屋で働いている姿をみて、ひとめ惚れ。そして、毎日のように通い、気軽に会話できるまでになっていた。その彼女が同性の女の子と交際しているという噂を聞いて、いてもたってもいられなくなった。噂が事実かどうかをどうしても確かめたい。
噂の彼女、おなじ居酒屋で働いているミコがマヤと腕を組みながらマンションに入って一時間もたつ。道路から離れた閑散とした場所。木枯らしに寂しさをあおられ思わず寒空をみあげた。星が流れたとき、マヤの部屋の明かりが消えた。
「最初からマヤが女性を好きだとわかっていたら……」
翌日、私はマヤと携帯で話した。
「マヤ、君はミコと……」
やはり、言いずらい。すると、マヤが察してくれたのか、
「そう、ミコと深い関係だよ」
あたりまえのように言ってのけた。
「マヤ、君が好きなんだ。だからさぁ」
もう気持ちを伝えるしかない。
「仕方ないなぁ、本当のことを話すよ。僕、もとは男性なんだ。ミコが同性しか愛せないことがわかって性転換をしたんだ。会社を辞めてからミコの働いている居酒屋にアルバイトをしたんだよ。彼女、僕が男性だったことも知ってるよ。どうにか心を射止めたよ。ここまでする気持ち、あなたにはわからないよね」
なんてことだ。マヤの気持ちは痛いほどわかる。今の医学では、性転換手術も技術が飛躍的に進歩した。男性から女性へはもちろん、女性から男性へも、ほぼ完璧に性転換できる。同性が大好きな私。男性になれば、きっとマヤの心を奪えると信じていたのに……。
(了)
愛のためなら二刀流 星谷光洋 @iroha13
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