第35話 蟻の思いも天に届く

「お、お邪魔しまーす。ほんまいつ来ても、圧巻される部屋やな。広すぎるやろ。こんな立派な部屋で生活できて羨ましいわ」


「ふっふっふ、やはりこの部屋こそ我の根城にふさわしい!ベータ!我にこの場所に住ませてはくれないか?」


「嫌に決まってんだろ」


時刻は7時半。

今日も魔法の特訓を終えた後、豪華な夕食をご馳走しアルマとルイを部屋に上げた。

その理由はもちろん、勉強をするためである。


早速、勉強会用に用意した大きな机と椅子に座り、勉強道具を広げる。

そして俺は持ち歩いているバッグの中から、秘宝を取り出した。

その秘宝とは……


すなわち、そう!

ありったけの夢をかき集め~

シャウラと共にかき集めた過去問である!


「べ、ベータ……うちらのためにこんなにぎょうさん、過去問集めてくれたんかいな!?」


「な、何と。我らのために……ふふっ、ははっ、やはりベータこそ我らグループのリーダーに相応しい人材であったか。神の子であり、世界の王となる我もその働きに、感服したぞ」


「それはどうも」


早速過去問を机の上に並べながら、もらった情報を整理する。

筆記試験は満点で500点。赤点は40点。

これは事前にヨイ先生からも言われていた情報。


新しく得た情報は、

去年この中間考査で赤点で退学した生徒が12人ほどいたってこと。

加えて去年の最高点は162点、一昨年は170点、一作昨年は158点、

何だって。


つまり……筆記試験、超ムズイ。


だって学年一位が約3割しか取れてないんだぞ。

やばすぎるだろ!


ということで、その情報をそのまま二人に伝えることにした。


「3割……つまりうちらは、100点取れれば万歳って感じか?」


「ふっ、何を言っているのだ。3割というのならば、我は4割取るというだけのことよ!」


「よぉ、そんな大口を叩けるなぁ」


「アルマのいう通り、現実的に言えば100点取れれば万歳かもしれないな。だが、目標で言えばルイが正しい。それに俺はお前らなら、しっかり勉強すれば4割取れると思う」


「ほ、ほんまか!?」


「ふっふっふ!左様であろう!おっとアルマには難しい注文であったかな?」


「はぁ?自分が取れんなら、うちだって取れるわ!」


「がーはっはっは!凡人である貴様が我を超えられるわけ無かろう!」


「や、やってみなきゃわからんやろ!」


また二人、言い争ってる。

だが矛先は良い方へと向かってくれているようだ。


ちなみに先ほど言った『しっかり勉強すれば4割取れる』と言うのは嘘だ。

正直厳しいと思う。さっき俺もチラッと過去問に目を通したのだが、普通に難しい。

けど……目標は高い方がいいじゃん!


それに一応……

授業内容を完全に把握できれば、確かに全問を解けるようにはなっているのだ。


だが……


その発展性がえげつない。

授業で習った魔術式の、読み解けないような複合魔術式がアホみたいに出てくるし、

授業で習った魔法陣を基に、お題に沿った魔術式を自作して書けって問題もあるし、

絶対時間内に解けないだろみたいな問題も、大量にある。


つまり元々満点なんてさらさら取らせる気がないってこと。

なら取れる問題をしっかりとる。

結局それが大事。


それは『S』クラスの俺だろうが、『E』クラスのアルマとルイだろうが変わりはしない。

受けてる授業範囲は一緒なのだ。


それが着実にできれば、4割だっていける!

きっと……


いや多分……



「ふっ、貴様が4割取るならば、我は5割取るに決まっているだろ!」


「じゃあうちは6割とりまーす」


「なぬ!?ならば我は7割!」


「うちは8割!」


「ふっ、ならば我は倍の16割!」


「16割って満点を超えとるやないかい!ノリで点数超過するなや!散財する競馬場のおっさんか!」


「我は競馬場のおっさんではない!神の子だ!そして世界の王になる女だ!」


「んなこと知っとるわ!……って、このツッコミはおかしいな。あんたは神の子でも、世界の王になる女でもあらへん!一般的な普通の女の子や!もういい加減、自覚せぇ!」


「ふっ、我が偉大なる存在であることを自覚できぬとは……愚かな奴よのぉ」


「その言葉まんまお返しするわ!」


「ふふっ、がーはっは!空降る闇の導きに轟き、天深き光に囚われると良い!」


「自分、いい加減どつくぞ?」


なんか険悪な雰囲気になりかけてる……。

何してんだコイツら。


パンっと両手を叩き、二人が言い合ってるの静止させる。

二人はいきなりの大きな音に驚きつつ、俺の方を見た。


「どんな調子に乗ったこと言ってもいいが、とにかく俺がわざわざお前らのために、過去問をとってきてやったんだ。そして付きっきりで勉強も魔術も教えてやってんだ。筆記試験、4割とれ!それで実技試験も最後まで生き残って1位になろう!それで……いいな?」


そう問いかけると、二人は嬉しそうに笑みを浮かべた。


「ふっ、当然だ!我らが頂点に立つ!」


「せやな!俄然やる気が出てきたわ!」


「ああ、その調子だ!じゃあ、これからの決意のために行くぞ!全員、天井に拳を突き上げろ!いくぞ!」


「「「おー!」」」


この時、やっとこのチームが一つになった。

そんな気がした。


けど……


それは錯覚だったのかもしれないと、今となっては思ってしまうのだ。

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【チート魔術師の異世界学園系青春譚】最強の魔術師たる者、清く、強く、賢く、そしてチートであれ 風のたより @kazenotayori

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