学校生活
第8話 死の原因
家に着き、創志さんと恋奈がいた部屋に戻った。
「お兄ちゃん大丈夫だった?」
恋奈が心配そうに聞いてきた。その後ろで創志さんも心配そうにしていた。
「あぁ、大丈夫だよ」
「良かった〜」
そう言うと恋奈が安心するように自分の胸に手を当てた。
「そういえば、響さんは?」
創志さんが不思議そうに聞いてきた。俺は迷った。本当の事を言って良いのだろか。それがいい事なのか、悪い事なのか自分には分からない。でも、これだけは言える。この人たち、自分に優しくしてくれる人に嘘はつきたくない。なら・・・
「終わったんです。長い長い戦いがやっと...」
「そうなんだね」
俺は言おうと思ったことが口から出ず、曖昧な感じなことを言ってしまった。なのにそこから恋奈も創志さんも誰も追求してこなかった。多分ある程度の事を察してくれたんだと思う。俺は本当にいい人に恵まれたんだな。俺はそんな事をしみじみ思った。
そういえば、俺の
「創志さん、自分の
そう言おうとして、創志さんの方を見ると、創志さんの顔が何かに怯えていて少し青くなっていた。恋奈の方も見るとほとんど同じ反応だった。俺が疑問に思っていると、
「バン!」
そんな音が部屋に響いた。その瞬間俺の左胸あたりに激痛が走った。
「えっ?」
俺は何が起きたか一瞬理解できなかった。そして聞きなれた声が聞こえてくる。
「甘かったな、戦いは終わってないんだよ」
聞いなれた声、それはさっきまで聞いていた父さんの声だった。何故、ここにいるのか。だいたい予想がついた。多分、凍った中でも意識があり、近くにあった何かと入れ替わったんだろう。そして俺は意識がだんだん無くなっていき、再び死んだ。
目が覚めると、泣いている恋奈と少しおどろきなが心配している創志さんの顔があった。
また恋奈を泣かしてしまったのか。あの時、泣かせないと誓ったばっかりなのに。
「ごめんな、恋奈」
そう言って俺は、泣いている恋奈の頭を撫でた。
「恋奈ちゃんから聞いていたけど、本当に生き返るなんて.....これは周りにバレないようにしないといけないね」
創志さんは険しい顔をしながらも、大丈夫と言わんばかりの笑顔を向けてきた。本当に優しい人だ。そういえば俺の
「創志さん、自分の
そう伝えようとした。その時、頭の中に何かが走ったような感じがした。
そういえば父さんはどうなったんだ?急に不安になり、後ろを振り返る。するとそこには血痕も傷跡を何も無い綺麗な状態で父さんが横たわっていた。
「えっ?どうして?」
俺は父さんが生きているか確認するため、首筋の太い血管がある場所を触った。結果は触った瞬間分かってしまった。何故なら少し冷たかったからだ。
俺が死んでいる間に何があったんだ?
考えていると、父さんの死体は母さんの死体の聞いた情報と似ている事に気づいてしまった。
なら近くに犯人がいるという事。俺は急いで周りを見た。でも、怪しい人影は一人も見つからなかった。
そんな時に急に創志さんが腕を掴んできた。
「廻斗君、気になるのは分かる。でも、まずここから出る事を優先して欲しい」
創志さんが真剣な眼差しを向けてきた。
俺が死んでいた間に何かがあったらしい。
「分かりました」
そう言い俺はすぐさま車へ向かった。
車に乗ると、創志さんはすぐに運転した。
「それじゃあ、家に帰ろうか」
運転している創志さんは今まで見たことないほど真剣な顔をしているのが鏡越しに分かった。
俺は先程から気になっていた横にいる恋奈の方を見る。何故気になっていたのかというと俺が死んでから一言も喋ってないからだ。いつもなら喋っているはずなのに。そう思っていると、
「廻斗君、それは君の事を心配しているからだよ」
急に創志さんに言われ、俺は口に出していたのかと思ってしまって少し慌てた。
「多分、廻斗君が死んでも恋奈ちゃんは生き返るって信じていると思う。でもその分、もう生き返らなかったらどうしよう、という不安もある。だから少しの間だけ、そっとしてあげて欲しい」
「分かりました」
恋奈にはもう、ここまで心配して苦しんで欲しくない。だから次こそは絶対に悲しませないようにしないと。
まて、父さんの事はどうするんだ?このままじゃ、俺たちが殺した事になるんじゃないか。そう思い俺は急いで聞いた。
「創志さん、父さんは?」
「それなら大丈夫だよ。もう関係者の人には言ったから。それに疑われる心配もないと思うよ。何故ならあの家は監視カメラが沢山あるからね」
俺はほっとしてため息をついた。すると突然自分の目から水が流れてきた。それはとてもしょっぱく、悲しい味だった。
呼吸を整え落ち着いた俺は創志さんに自分の
「創志さん、自分の
そう言おうとすると創志さんが食い気味で話した。
「そうそう、廻斗君の
そう言われ俺は恋奈の方を見る。恋奈は疲れきったのかぐっすりと眠っていた。
「寝ています、ぐっすりと」
「なら良かった。今から話す会話は多分、恋奈ちゃんには耐えられないだろうからね」
どういう事だろう?俺の
「今から話すことは私の推測なんだけど、多分ある程度当たってると思うから。それと話している時にくれぐれも大声は出さないで欲しい。恋奈ちゃんが起きてしまうからね」
俺は静かに息を飲む。
「廻斗君の
「はい、合ってます」
そんな創志さんの推理を聞いていて、俺は鳥肌が立った。自分の何もかもを見透かされているような気がして少し落ち着かなかった。
「なら、いつ死んだか覚えてる?」
「はい、忘れたくても忘れられないですから。なんたって、母さんが死んだ時に俺も死んだんですから」
「やっぱりか...」
『やっぱり...』とはどういう事だろう?
「廻斗君、今までの自分の死に、共通点があるのが分かるかい?」
俺の死に、共通点なんかあるのか?どれも違うように思うけど。もしかして!
「どちらとも心臓が損傷したことですか?」
「確かに、その共通点はあると思う。だけど、もっと大きな共通点があるんだよ」
なんだろう?全く分からない。
「すみません、わからないです」
「それは、廻斗君が死んだ時に相手も死んでいることだよ」
「・・・!!」
確かに、俺が死んだ後に、創志さんから電話がきて、母さんの死を知った。そして次俺が死んだ時には後ろで父さんが死んでいた。
待って、ということはこの仮説が正しかったら・・・
「そう、これが正しかったら、廻斗君が両親を殺したことになる」
俺が思っていることを先に言われた。
もしこれが正しかったとして、俺はこれからどうしたら良いんだろう。親を殺し、仕事も何もない。本当に俺は無能なのかもしれないな。
「まだ、決まった訳じゃない。可能性の話しだから。まだ考えなくてもいい。でも、これには一つ確認の方法があるんだよ。でもこれでもし出来てしまったら、この説は正しかった事になる。するかしないかを決めるのは廻斗君次第だよ」
俺はこれを言われている時、何となく自分で察してしまった。多分確認の方法は違う
俺は黙って、ポケットからスマホを取り出し、創志さんの横にあるドリンクホルダーにある、飲み終わった缶コーヒーをじっと見つめた。そして、凍らせる
それを見た創志さんは少し驚いたが、すぐに落ち着き運転した。
「それは響さんの
「はい、多分そうだと思います」
しばらく沈黙が続いた。お互い、何を言えば分からない状況になった。なのに意外と気まずさは無かった。
俺は沈黙の時間を使って、これからの事を考えていた。何をすればいいのか、どうやって生きていくかを。
そんな時、創志さんは思いついた顔をして話してきた。
「廻斗君、学校に通う気はあるかい?」
だから俺は死にたい 桜坂虚無 @grayner
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