第6話 『好奇心』の悪役
「さてと。ウーロポーロ、約束通り、ブラハード・ローズの居場所を教えて貰おうか」
僕とアレックスは『燃焼』の
多少のいざこざはあったが、ようやく目的は果たせそうだ。
「任せたまエ。ラシャード、こちらにきたまエ」
「イエス、ボス」
ウーロポーロは護衛に声をかけた。
ラシャードと呼ばれた緑髪の少年は、こちらに歩み寄るとぺこりと挨拶する。
「ラシャード・H・ノアです。よろしくお願い致します」
「ハル・フロストだ。よろしく」
「アレックス・ショーであります。よろしくであります!」
ラシャードは僕と同じぐらいの背丈の少年だった。
丁寧な物腰と合わせて大変に好感が持てる。
「私は『好奇心』の
「全て? それは凄いな」
『好奇心』の悪望能力。
字面から想像すると調査系の異能だろうが、当然詳細は教えてもらえないだろう。
情報は武器だ。ラシャードがヨーヨー・ファミリーの秘蔵っ子であることは間違いない。
ラシャードはテーブルに地図を広げると、とあるビルを指差した。
「ここがブラハードの拠点です。このビルの周囲は空き地のため、日中に攻めるのは見つかりやすいため、オススメできません。ブラハードの能力はご存知ですか?」
「『燃焼』の
「イエス。より正確に言えば、ブラハードは火球を生成した後、ターゲットに向けて火球を飛ばす異能を使います」
ひとくちに
相手にして最悪なのは目で見たものを即座に発火させるタイプの能力で、それに比べると火球を飛ばすのは多少はマシと言える。
「正面から行くと、ブラハードの火球の的になってしまう訳だ」
「イエス。夜襲をかけることをオススメします」
「なるほど。理に適っているのであります」
ラシャードの意見にアレックスが納得する。
しかし、ラシャードの提案は理に適ってはいるが、そのプランを採用するのは不可能だ。
「ククク、無駄だヨ、ラシャード。ハル・フロストがどんな悪望を抱いた男カ、忘れた訳ではないだろウ?」
「『正義』の悪望ですか。大変に『好奇心』が唆られます」
ラシャードが目を輝かせて僕を見つめる。
そう、僕は『正義』の
「相手が油断しているところを後ろから攻撃するなんて卑怯者がすることだ。『正義』は決して奇襲をかけたりはしない。ブラハードを捕らえるのなら、正面から正々堂々と、だ」
「大変な先輩と組まされてしまったのであります……」
アレックスがゲンナリしていた。
「助太刀するかネ?」
「いらないさ。ブラハードの部下は一般人だろ? 僕1人で充分だ」
ラシャードは周辺地図の他に、ビル内の平面図も持っていた。
8階建ての平面図をじっくり眺めて、特異な構造をしていないか確認する。一般的なオフィスビルの作りだ。室内に柱があるので火球を避けるための防壁にすることが出来るかもしれない。
ブラハードの顔も拠点も悪望能力も判明している。
簡単な仕事だ。手早く済ましてしまおう。
「よし、アレックス。乗り込むぞ」
「今からでありますか!?」
目を剥いたアレックスの首根っこを掴んで部屋を出ていこうとすると、後ろからウーロポーロの注意の声が飛んできた。
「ああ、ハル・フロスト。気を付けたまえヨ。最近、怪しげなドラッグが出回っているそうダ。なんでも、
「笑える御伽話だな」
悪望深度は意思の強さによって決まる。クスリでどうこう出来る訳がないのだ。
僕は鼻で笑うと、そのままウーロポーロ・ヨーヨーの拠点を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます