第7話 「パッコマンィィィイィィッ」

「さて、諸君、昭和54年のあの日に、我らが版図カシュガルに落下した物体がなんであったかは、知っていると思う」

「今日の講義の議題は、それですか先生」

「そうだ、質問は後で受け付ける、静粛に頼む」

木崎は、講堂の外を眺める。嫌な雨の日だ・・・・、憂鬱になる。振り返り、興味深々な生徒を見て少し自身を奮起させた。

「所謂、PAKKOMANNと呼称する生命体を載せた、恒星船、Pakkomann-Eは、、、、最初期は当然ながら・・・自然天体であろうと考えられていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それが、恒星間宇宙船だろうと想像したものは、いたのだろうか?私は・・・・

当時、世界では、第三次世界大戦が行われていた。我が日本は他国を超越する新たなる兵器の開発を望んでいたが、未だ何も見えていなかった時期だ。

一応、同盟国であった、ドイツ帝国が東進し、我が国が危機感を覚えていた、丁度、そのころの話だ・・・・

私はまだ、小学生で、何もわからなかったが、大人たちが狂ったように怯えているのは理解出来た。

授業が終わり、生徒たちが教室を出ていく。

私は暗然と突っ立っていた。

国家機密であろう情報を話してしまいたくなった、自分の自壊衝動に驚いたからだろう。

質問をしてきた、彼の洞察は、全くその通りなのだ。

現在人類が滅びに瀕しているのは、我々日本人のせいだ。

全て

全く全て

何十億という人間が日本人の悪意によって死んだのだ。

ヒトラー?、、、ははっはははは・・・・・

下らない。

忘れてしまえ、忘れろ、忘れろよ、忘れてくれ、忘れさせてくれ、誰か俺を、俺を・・・

顔を伏せた。涙が流れる。

自分が信じてきた正義、自分が生きていた意味、全てが、ああ、全てがひっくり返った・・・

「木崎先生」

数人の白衣を着た男たちが、私を囲んでいる。

お迎えが来たのだ。

私は知っては知らない事を気づいてしまったのだから。

質問した彼は、なんという名前だったのだろうか?

国家保全省と書かれたバンに乗せられる。

ああ、私は私は私は私は・・・・・

「鎮静剤、フェビファノバール10」

「打ちました」

「ふう、全く、忙しいな」

「この・・・木崎氏は何をしたのですか?」

「ははははっ、知ったら、俺らも収容所送りだ、いや、精神病院か・・ぷっくくく」

「は、はぁ、毎度毎度ですけど・・・・気持ちが悪いですね・・・」

「うるせぇな、お前らに言っておくが、兎に角考えるな、そして、俺に何も聞くな」

「前、あれ、検問じゃないですか・・・・・」

前方に首都警とマーキングされた、彼ら独特の装甲車が回転灯を光らせ得ている。

「ちっ、首都警か・・やっかいだな」

「大人しく検問受けますか?」

「仕方あるまい、こっちはただ、基地外を一人連行しているだけだ、問題はないだろう」

装甲強化服を着た集団が近づいてくる。

「奴らは、いつだって、帝都の支配者気取りだ・・・・えーーーと、一応、舟木氏に連絡を入れろ」

「了解です」

バンバンっ

サイドガラスが叩かれる。

「はい、なんですか?」

「石井竜太郎だな、木崎康臣氏を引き渡して頂こうか」

「ちっ、なんの権利がお前らにあって・・・・」

「帝都に関係する、全てに、我々の権限は及ぶ、諦めろ」

「おい、まだか?舟木氏と連絡は・・・・」

ガンッ

車が、首都警隊員の手で大きく歪む。

「ぐっ・・・」

「全員、手を挙げて出てこい、腹ばいになり、頭に手を載せろ、余計なことをしたら、即刻射殺する」

重機関銃が全員の頭に向けられている。

「仕方ねぇ、おい、言うとおりにしろ」

木崎だけは、車から出ずにうつむいたままだった。

彼の呟きが微かに聞こえた。

「日本人は断種されるべきなんだ・・・・・」

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異世界でハーレム作る筈の僕が、こんなに出来の悪いわけがない 高橋聡一郎 @sososo

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