第9話 凱の阿修羅琴よ、なびけ
「さてさて、
俺達は、
「
お寺に入って直ぐにお守りが売っていた。
「皆、京都もいいけれども、柴又もね。少し見て行く?」
四人揃って激しく首肯したのが、可笑しかった。
「七福神守、楽しそうで可愛いやん」
意外と女子受けするタイプの
仲間が多いものな。
七百円か。
じゃらんと根付風なので、きっとお財布につけるだろうな。
「
試験合格成就御守の青を
五百円で合格できたら、素敵なお買い物だろう。
「きゅん。僕は可愛いキャラもののお守りだな。水色が綺麗だ」
六百円か。
この間は四百円だった気がする。
健康御守のブルーを選ぶ。
元気なことはよきことよ。
「病気平癒、いいですね」
本格的だ。
木箱入り、千二百円とはな。
ご家族用だろう。
「私は、この安産のお守り」
「は!
木箱に入って、千五百円もする。
本気出していませんか。
「俺は、ぎゅうしただけだよ? 大丈夫、手を繋いでも心があたたかくなるだけだから、お産はないと思います」
「ええ? お父様と話が違います」
頬を膨らませているのが、愛らしい。
「嘘吐きましたね、父王」
「我なり。さあ。虫よけだわい」
てくてくてくてく。
ざわざわ。
まあ、奥様的にそぞろ歩きをする。
その後、参道の入り口にあるお団子屋さん、
「いらっしゃいませ」
「お邪魔いたします。向こうでも構いませんか?」
「どうぞ、こちらになります」
野郎ども五人とレディー一人で奥にある座敷の方へ上がった。
「おー、いいね」
「デス」
俺は、わちゃわちゃするのが大好きだ。
いいな、コイツらとしみじみと思う。
「おーい。
「んだと? 俺の口癖が『じゃん』だからか?」
俺は
「まあ、先程こちらへ向かうときから、お言葉が変わりましたね」
「流石に
男同士で嬉しくもないが、女子では恥ずかしくて困るからね。
「それそれ、中学のときは、どうしてそんな風に言うのか不思議だったけれども、理由があるんやんね?」
「まあ……」
コイツらになら、話してもいいか。
「そう言えば、
青い模様の白いお皿に、お団子が五つころんと重ねられ、餡子がふわっとかかっている。
それが六つ来たせいでもないだろう。
静まり返ってしまった。
暗い話だったか。
「要するに、亡くなったお
場の空気をお団子の雰囲気にする為、一ついただいた。
「んぐんぐ……。形ばかりだったかなと反省しているさ。
「なぜに反省なんてしているの。想い出は張り裂けそうなときに、吐き出していいんやんよ」
そんな顔をしているのかな。
今の俺。
「ワタクシ、今の話を聞いて、初めて涙が出そうになりましたデス。お父様の件、同情いたします。ワタクシの父は、科学者なのですが、実験中に怪我をしてしまいましたデス」
「泣いたらいいよ。
人に声を掛けながら、俺が先に泣きたい気持ちだ。
さっきから、情けない。
「それもワタクシの目を人工のものにする手術するときでした。機器の故障で、電気火傷をしてしまったのデス」
「
お茶は、自分らで大きな急須から注ぎ合う。
「
「気にする内容ではないっす。連携プレイがよかったと思うっす」
「
どうしましたか、
「
「どうした?
皿を幾枚も散らかして食べている。
隠れ甘党じゃないか。
「忘れ物していないか。『じゃん』がないよ」
「だから、俺は、『
今もブレザーの制服の下に、金の輪を感じる。
「これからの俺は、現世に取り残された
トゥルンルンルン……。
シャララララン、ツァルルル……。
俺は、闘って変わった訳ではない。
チームタッグを組んでから、よく考えた。
仲間とも友達とも言える不思議な縁を感じた。
トゥルンルンルン……。
シャララララン、ツァルルル……。
「――凱?」
「ああ!
別れたくない。
「大王?」
「……」
そのとき、小さく聞こえた。
「お主次第だ」
「……俺が? 俺次第で、再び、
俺は、一人お団子屋を飛び出した。
「どうしたやん、
西におられるのだろう。
茜色の空へ向かって叫ぶ。
「
それは、虚空にはね返る。
俺の声ではない。
聞いたことのある俺の腹からのものだ。
「
―― 凱の阿修羅琴よ、なびけ 【了】 ――
凱の阿修羅琴よ、なびけ いすみ 静江 @uhi_cna
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