第04話 『Infinity』
および
本来、ちょっと変わってはいても4人だったお互いは今、奇妙な形で
いや、正確には三角形だけではなく、∞――
凜が好きなのは
静が好きなのは
矢印は常に一方通行で、報われることなく想いはそれぞれに向けられ続ける。
だがその想いが他の誰かに向かうことはなく、閉じられた∞の記号の如く、くるくる、くるくるとその場にとどまり続けているのだ。
これが本来の4人であれば、よくある落としどころも探れたのかもしれない。
だが傍から見る分には、男がクソヤローの二股展開。
男から見る分には、想いがすれ違う悲恋展開プラス二重人格問題。
女から見る分には、相思相愛なのに二股をさせていることになる一心二体問題。
それぞれ当事者によって見え方がまるで異なるこの少し奇妙な男女の関係が、誰の想い、誰の動きでどうなってゆくのか、今の時点ではなに一つ定まってはいない。
匡臣と匡賢が一つに融合して、凛と静のどちらかを選ぶのか。
凛と静が本当の意味で二人に戻って、それでも二重人格の匡臣と匡賢を愛するのか。
匡賢と匡臣が本来の双子の兄弟に戻れ、凛と静それぞれと幸せになるのか。
それともお互いがまるで違う人と出会い、高校時代の良い思い出としてアルバムの中に閉じ込めてしまうのか。
これからのお互いの行動次第で、可能性はそれこそ無限に広がっている。
高校生活はまだ始まったばかり。
直近のイベントではゴールデンウィークが迫り、その後には中間試験を挟んで宿泊研修なども控えている。
その後の期末試験を過ぎれば、高校生活初の夏休みが訪れる。
今のところもだもだしているだけの男性サイドとは違い、女性サイドはいろんな意味での告白すら視野に入れた、大胆な動きを取ろうとしている。
それに物語はなにも主人公たちだけで回っているわけではない。
匡臣、匡賢には叔母の娘という
凜には今のところ異性の影はなにもないのだが、それすらも転校生だの読モ活動の過程で出会う芸能人だの、知り合っていく人間はいくらでも増えていくのだ。
恋愛はタイミングだとよく言われる。
後になって振り返ってみれば、その瞬間を外していたらこうはなっていなかったかもなあというカップルが、実はほとんどなのかもしれない。
例え選択肢は無限に存在しても、それを選ぶのはお互いなのだ。
そして時間が過ぎれば過ぎるほど、ある結末に至れる選択肢は無限の中からその数を加速度的に減らしてゆく。
今この時に自分が思い描く
無限の可能性は行動しない者に対して、その選択肢の無限はそのままにすべての可能性を順に閉ざして行き、やがてどの選択をしても失敗にしか辿り着かなくなってしまうモノなのだ。
時は止まってくれない。
今この瞬間にある選択肢を逃せば、同じ物語には二度と戻れない。
誰かを好きだと思うのなら、思えるのなら――
無限の可能性などという戯言に縋っている場合ではない。
たとえ可能性が零だと思えても、まずは動かなければどんな物語でもその幕が上がることは決してないのだから。
【△】D&T【∞】 ~見た目は男1人と女2人、実際は男2人と女1人の三角関係?~ Sin Guilty @SinGuilty
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます