Evil Encounter
琴葉紬
第1話
本稿はとあるおぞましい事件に関与した者たちへのインタビューを基にし、編集・再構成を行った上で作成されたものである。
あらかじめ忠告しておくが、この先で語られる事件はフィクションなどではない。
解決したとされているものの、この一件には超常的存在が関与しているため、読者である諸君にもなんらかの危害が及ぶ可能性がある。
全て自己責任であるということを踏まえ、それでもなお知ることを望む勇気ある者のみ、この先に目を通して欲しい。
1996年6月6日、アメリカコロラド州のとある町にて事件は起きた。
フレデリック・アンダーソンという老齢の牧師が、教会の門の前で何者かに腹部を刺され遺体となっているところを、教会を訪れた近隣住民によって発見されたのだ。
警察の調べによると、死亡推定時刻は午前0時〜2時の間、凶器は包丁のようなものであり、犯人はかなり小柄な人物であるとのことだった。
当初はすぐに解決すると思われたこの事件だが、思わぬところで捜査は躓くこととなる。
現場付近の監視カメラをチェックしたところ、犯人と思われる人物が写っており、その人物は牧師殺害の凶器となったであろう包丁を握りしめていた。
しかし、警察はその人物を犯人であると断定することに否定的だった。
それは何故か。
監視カメラに映っていたのは、近所に住むブラウン家の次女、ハンナ(5歳)だった。
老人とはいえ、成人男性であるアンダーソン牧師が5歳の少女に殺されることなどあり得ない、というのが警察の見解だったのである。
しかし、他に犯人と思しき人物はおらず、ハンナが所持していた包丁が犯行に用いられた可能性が高いことから、警察官はブラウン家を訪れた。
6月8日、やって来た警察官とブラウン家の主人アレックスはこのような会話をしたという。
「事件当日、ハンナちゃんが包丁を持って歩いているところが監視カメラに映っていたんですが、何か心当たりは?」
「娘は最近夢遊病を発症したように、毎晩家の中をウロウロしていたからな。もしかしたらその日は外にまで行ったのかもしれないな...」
「ハンナちゃんが外に出たことに気づかなかったんですか?」
「近頃おかしなことが続いていて、私達は心底疲れきってる。あの日はようやく眠ることが出来て、朝までぐっすりだったんだ。そのせいで娘が出て行く物音に気付かなかったのかもしれないな」
この時アレックスは見るからに憔悴した様子だった。
「おかしなことというと?何かお悩みでも?」
「警察の人が信じてくれるとも思えないが...」
しばしの沈黙の後、彼は重い口を開いた。
「数日前から、家具が勝手に動いたり、奇妙な音が聞こえたりするんだ。鼻を突くような気持ちの悪い臭いもする。どうにかしようとしたが、私達ではどうすることも出来なくてね。明日には専門家が来てくれるらしいから、もう大丈夫だと思うよ」
その後警察官は念の為家宅捜索を行ったが、事件に関与するものは見つからなかったという。
以上がアンダーソン牧師殺害事件のあらましである。
その後捜索は難航するものの、一応の解決を迎えることになるのだが、そこまでの過程について話すにはまずブラウン家の人々や、彼らが住む家で起きていた奇妙な出来事を知る必要がある。
そのため、まずは彼らについて話していくこととしよう。
Evil Encounter 琴葉紬 @tsumugu_kotonoha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Evil Encounterの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます