付喪神 ~人の話はよく聞こう~(フリー台本)
舞台 住宅地のはずれの小さな稲荷
登場人物
徳利の付喪神…初老。
しゃべり方はのったりと抑揚は少なめでゆっくり目に(イメージとしては千○のノブさん)(性別は男性だが変更可)
性別を替えるときは台本内の呼びかけも(爺さん→婆さん)変える。
警官…ハキハキと勢いのあるヒーローを連想させるしゃべり方(性別は男性が理想だが、女性でも可)
子どもA、B、C…小学生くらい(性別は自由)
内容
付喪神を不審者と思って職務質問をする警官。
以下本文
*******************
音: 木々のざわめき
遠くでクラクション
少し遠いところを通り過ぎる車の音
下校中の子ども達のしゃべる声
子どもA(遠ざかりながら)
「なぁ、知ってるか?
ここのお稲荷さん、スッゲー
徳利があるんだって」
子どもB 「えー!マジかぁ。
ていうかさ、
徳利って何? 」
音: コトコトと徳利が動くような物音
付喪神 「おや、呼ばれたかの?
うーん。
あぁ、なんとも
のどかないい天気だのぉ」
音: ボキボキと指を鳴らすような音
付喪神 「しばらく動いてなかった
もんで体が固まっておるわ。
どぉれ、
ちょっと足でも伸ばすか」
音: 徳利がコトンと倒れる音
付喪神 「昼間に目を覚ますのは
久しぶりだが、ええもんじゃ。
おお、
紅葉が色づいておるではないか。
今夜は仲間の妖怪どもを呼んで、
紅葉狩りでもするかのぉ」
警官 「おい! 」
付喪神 「さてと、誰を誘うかのぉ」
警官 「おい! お前!
聞いてるのか?お前だぞ!
爺さん! 」
付喪神 「おや、お巡りさん。
お前とは、
わしのことか? 」
警官 「そう!お前だ!
ここで何をしてる? 」
付喪神 「何もしておらん」
警官 「嘘をつくな!
お稲荷さんの徳利を
懐に入れたろう?
なくなっているじゃないか」
付喪神 「それは、わしじゃ」
警官 「ナニをわけのわからん言ってる!
あれは江戸時代からずっと
このお稲荷さんに伝わるとか言う
ありがたい徳利だぞ!
汚れて欠けて
そうは見えないかもしれんが
この稲荷の宝だ!
爺さん、どこへ隠した?
ちゃんと戻せ」
付喪神 「いやいや、
そんなに褒められると
なんとも照れくさいの。
戻すも何も、
その立派な徳利はわしじゃ」
警官 「爺さん。あれはな、
注いでも注いでも
酒が出てくると伝わる
不思議な徳利なんだ」
付喪神 「え?そうなのか? 」
警官 「ああ!そう言われている」
付喪神 「お前さん、
やってみたのかい? 」
警官 「まさか! 」
付喪神 「やったこともないのに、
なんで酒が出てくるとわかる?
本人のわしも知らんかったと
いうのに」
警官 「そりゃ。
雨水が出てきたら
嫌じゃないか」
付喪神 「わははは、なるほどな」
警官 「笑って誤魔化すんじゃない。
爺さん、
ちょっと署まで来てもらおう。
話はそこでゆっくり聞く」
付喪神 「これからか? 」
警官 「そうだ!ほら! 」
付喪神 「いてて!
お若いの、
そんなところを持つんじゃない。
折れたらどうするんじゃ」
警官 「爺さんが
動こうとしないからだろ」
付喪神 「わしは鳥居から外には
出られんのだが」
警官 「わかった、わかった。
そういうのも
署でじっくり聞くから。
とりあえず、
署まで来てもらおう。
さ、こっちだ」
付喪神 「お前さん、
恥をかくだけだぞ」
警官 「そうだろう、そうだろう。
さあ、行くぞ」
音: 玉砂利を歩く警官の足音
下校中の子ども達の声
(バイバイ、あとでね、サッカーどこでする?など)
子どもC 「あ!お巡りさん!
その徳利、
持ち出しちゃダメなんだよ!
ここの神主さんがそう言って
たんだから! 」
警官 「え?徳利?
あ!あれ?爺さんは? 」
付喪神 「ホラな、
徳利はわしだと
何度も言ったではないか。」
(くすくすと笑いながら、壁を隔てているような感じで)
~おしまい~
こえで語る(声劇フリー台本集) 小烏 つむぎ @9875hh564
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