子供を寝かしつけるときのつまらない話

@sakosato

子供を寝かしつけるときのつまらない話

 昔むかし あるところにおじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは山にシヴァ狩りに、おばあさんは川に洗濯に行きました*1


 *1 シヴァ:ヒンドゥー教の神。現代のヒンドゥー教では最も影響力を持つ3柱の主神の中の1人。


 おじいさんの関羽のようなヒゲを持つ*2


 *2 関羽:中国 後漢末期の武将。劉備に仕え、各地を転戦する。劉備の入蜀の際には荊州を任される。呉の孫権と対立し、関係が悪化。軍を率いて北上し、魏軍を苦しめる。これには魏の曹操も狼狽し、遷都を考えるほど。魏は呉と組み、関羽を撃破。関羽は討ち取られる。荊州は劉備の手から離れることになる。

 蜀を手に入れていた劉備は荊州を奪還しようと軍を東に向けるが、呉の将軍 陸遜の火計の前に大敗する。

 劉備の荊州攻めは関羽の復讐戦だったが、諸葛亮の天下三分の計には荊州が必須で、荊州がなければ魏に対抗することができなくなるため 戦略的な意味も充分にあった。

 三国志演義は蜀を建国する劉備と諸葛亮が主人公のような物語で、血湧き肉躍る活躍をする。しかし、魏とは国力が違う。ふたりの主人公が去ったあと、30年弱で蜀は滅亡してしまう。主人公の国の滅亡。ファンの間では誰が蜀滅亡の戦犯だったのか? という話題が繁くあがる。

 蜀滅亡時の皇帝 劉禅か?

 魏の司馬昭、鍾会、鄧艾による蜀攻略戦で敗戦の原因をつくった宦官の黄皓か?

 同じく蜀攻略戦で山越えし、疲労していた鄧艾軍に攻撃をかけずに敗北した諸葛亮の子 諸葛瞻か?

 253年に費禕が暗殺された後 たびたび北伐を起こし国力を消耗させた姜維か?

 劉備の死後、国力を回復させ、5度の北伐をおこなった諸葛亮か?

 いや、それ以上に多くのファンから戦犯にあげられるのが、この関羽なのだ。そして、復讐戦に敗れた劉備なのだ。

 荊州失陥と復讐戦での大敗北。これが蜀の運命を決めた。北伐をおこなった諸葛亮にも姜維にも領土切り取りのワンチャンがあったかもしれないが、もう無理ゲーだった。

 関羽は見事なあごひげ、ほほひげを持ち、後世では商業の神として崇められている。


 おじいさんとシヴァは山の中腹にある開けた場所で戦った。

 おじいさんの武器は鉈だ。シヴァの武器は三叉の鉾だ。

 シヴァは神だ。強い。額にある第三の目からビームを出す。口から炎をはく。風を起こす。

 おじいさんは70歳だ。筋力は衰え、筋肉痛は4日遅れてくる。ここまで来るにも息が切れている。

 しかし、おじいさんは若い頃 鬼を倒した鬼狩りだった。普通の人が仕えない秘密の技が使える。


 おじいさんとシヴァは三日三晩戦った。激闘だった。おじいさんの鉈は折れ、わらじは破れ、服もズタズタだ。

 シヴァは優勢だが疲労の色を隠せない。

 おじいさんはひげをなでた。秘密の技だ。蒼い龍のような何かが出てきた。

 そしてその時が来た。


 おじいさんはシヴァの首をとった。


 おじいさんはシヴァの首を家に持ち帰った。机においた首は、死んでいないのか、なにやら動いている。それ以上に 首からなにやら生まれそうな雰囲気だ……


 一方、川に洗濯に行ったおばあさんにも驚きの出来事があった。

 大きな大きな桃が川の上流から流れてくるではないか。


「げげー! こんなに大きい桃は持って帰れない!」


 おばあさんは、おじいさんを呼びに行きました。今にも何かが生まれそうな首を放置し、おじいさんとおばあさんはダッシュで現地に駆けました。しかし!


 桃は下流に流れていました。


 (このあたりで3歳の娘は寝ました)

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