ぼくらの星

ユキ丸

第1話 白い花のうた

 白いお花の花びらに お星さまが降り立った

 つるりと花びら滑って お花の中に落っこちた

 ぼんぼりみたいに光って 白いお花は思った

 一緒にお空に行きたいな


 白いお花みいつけた お空の上にみいつけた

 お花はぼんやり光って お星さまを包み込む

 柔らかふんわり包まれて お星さまは思った

 このままうとうと眠りたい


 白いお花も夢の中 お星さまと夢の中

 お星さまはふんわりと 白いお花にいだかれた

 仲良くふわりと微笑むと 白いお花は思った

 わたしも星になれたみたい



 ぼくらは歌を歌いながら、ハンカチ落としをしておりました。チルコの歌う声が心地よくて彼女の歌声にうっとりしておりますと、ぼくはトンと肩を叩かれました。見るとチルコが立っておりました。チルコの瞳が一瞬碧色にきらめいたように見えました。ぼくは、意識が星空の彼方へ行ってしまっておりましたので、ぐるぐる糸を巻いて呼び戻さねばなりませんでした。糸には、銀河の欠片がきらきらとついていて、遠い彼方を思わせ、ぼくを揺り動かすのでした。

「どうしたの?」ぼくはチルコに尋ねました。

「ほら、搭乗ゲートが開いたわ」チルコは小さい声で云いました。

 ぼくが、チルコが云った方を見ると、そちらの方に確かに、制服を着た女の人が立っておりました。

「みんなは?」ぼくが聞くと、チルコは首を傾げました。「みんなって?」

 ぼくが、だってと云って、みんなの方を見ると、そこは待合室のようで、透明のプラスチックの椅子がいくつかただ空いたまま、置かれているのでした。

「おかしいな。ぼくらはさっきまで、、、、」ぼくが云い掛けると、チルコは首を振って、

「さあ、行きましょう」と、云いました。ぼくは、どこへ行くと云うのだろう? と、訝りましたが、チルコは気にするでもなく、ぼくの手を引きました。チルコの手は柔らかくて、微かに温かでした。ぼくはチルコについて搭乗ゲートへゆきました。チルコがチケットを2枚切ってもらっておりました。ぼくはチルコについて吸い込まれるように中へ入ってゆきました。通路は薄暗く、色とりどりのスワロフスキーが上にも下にもついていて、奥の光に反射してきらめいておりました。途中にアテンダントが立っており、こちらですと案内されて、ぼくらは座席に付きました。

 気がつくと、ぼくは本当に小さな星に立っておりました。たぶん、100歩も歩いたら一周できてしまうほどの。チルコは隣で眠っておりました。ぼくたちだけの星でした。やさしい空気が満ちておりました。ぼくはチルコにそっと毛布を掛けてやり、あの歌を歌いました。

 チルコの頬に一筋の泪が流れ落ちました。ぼくは持っていたハンカチで、その涙をぬぐってやりました。ハンカチはきらきらときらめきました。涙はハンカチから滑り落ち、キラキラきらめきながら、宇宙へ流れてゆきました。

 それからぼくらは千年、その星で眠っておりました。そして千年目の今日、ぼくが目覚めると、宇宙はお星さまのお花畑が満開になっていたのでした。そしてぼくはあの歌をもう一度歌いました。その歌が聞えたのか、チルコもゆっくりと目を覚ましたのでした。

「宇宙のお花畑まで来たのね」

 チルコが云い、ぼくらはお花畑のなかをふわふわと、飛んでゆきました。

 ぼくらの星を振り返ると、ハンカチが旗のように光って瞬いておりました。



 お花畑星雲のハンカチ星、それがぼくらの星の名前だった、と風の便りに聞きました。

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ぼくらの星 ユキ丸 @minty_minty

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