第5話 初戦闘を終えて。

※今回は説明回となってます。







「ふぅ、この生活にも大分慣れたな」


 子供のドラゴンとのバトルから2ヶ月後。


 俺こと水神 海斗は現在、健やかに異世界森林サバイバル生活に順応していた。


 どこでサバイバルしているかというと、ドラゴンとの死闘を繰り広げた場所から83m離れた場所である。

 間違えないで欲しい、単位は"m"だ。つまり、ほぼ動いていない。


 何故そんな近い場所なのかって?

 何故街を目指さないのかって?

 理由は単純だ。街がどこにあるのかわからなかったからだ。


 ドラゴン討伐後、近くにある1番高い丘から360°見渡してみたが、街を見つけることができなかった。


 街が見えないということは、どっちの方向に、どの位の距離を歩けば良いのかわからないということである。


 これは正直に言って非常に危ない。


 この世界は、2m越えのオークや全長15mもあるドラゴンが出る危ない場所である。しかも、ドラゴンは15mもあるのにまだ子供らしい。


 そんな世界で、サバイバルの知識もない一般的な男子高校生である俺が街を目指して彷徨うなど不可能である。


 あと、もし戦闘になったとして、湖の様な大量の水が近くにないと不安すぎて夜しか眠れなくなってしまったのも理由である。


 そんなこんなで、まずはサバイバルの力と、あるかどうかわからないが異世界転移お決まりのレベル上げをしようと考えた。


 ちなみに、ステータスウィンドウは何回叫んでも出てくることは無かった。




 この2ヶ月間なにがあったのかザックリと振り返ってみよう。


 まず最初の10日間くらいはめちゃくちゃ苦労した。主に生存するために。


 一般的な男子高校生が、急に何も持たずサバイバルをしろと言われてできるはずもない。

 そんな俺が生き残れたのは、本当に運が良かったといえる。


 生き残れた理由の1つに、俺がよく見ていた某You◯ubeという動画投稿サイトにある、ディス◯バリーチャンネルに出てくるエ◯というハゲたおっさんの教えがあったからだ。


「ありがとう◯ド」と何回言ったか記憶に無いほど連呼した。

 ほんまありがとう(エセ関西弁)。


 エ◯曰く、サバイバルに必要なのは「Water、fire、shelter、and food」らしい。まあ、つまり「水、火、家、食糧」である。

 

 その必要な4つの確保は割と簡単だった。


 水は余裕だ。

 俺の能力はただ水を操作できるだけでなく自分自身で水を創り出せるのだ。

  

 つまり、砂漠でも余裕で生きていける。ただし、水を創り出すのに少し時間がかかる為、今のままでは戦闘には使えない。


 次に火は、中学生の時に習った屈折を思い出し、水を操り虫眼鏡の様なレンズ状にすることでゲットした。


 家はめちゃくちゃ苦労したが、ドラゴンの鱗や骨を水で持ち上げて操作して作った。


 作ってみて感じたが、どうやら俺には美術の才能はないらしい。実にダサく不格好な家ができた。


…が、自分で作った家なのでめちゃくちゃに愛着がある。俺にとっては最高の家を作った。


 食糧はドラゴンの肉があった。…のだが、これがまた一苦労した。


 それはもうゲロも涙もありとあらゆる汁を垂らしながら死ぬ思いで捌いた。


 だって、僕の年齢を覚えているだろうか。16歳だ。

 実家暮らしで普通の家庭で育った。一般的な男子高校生は家庭科の授業以外で包丁など触るはずも無く、魚を捌くなんて夢のまた夢。


 そんな俺の人生初の捌きがドラゴンである。


 捌き童貞をドラゴンで捨てるやつなんて、異世界広しと言えど俺くらいなもんだけだろう。


 と、まあ、そんな若かりし日もありました。

 2ヶ月も経ってしまえば毎日こなす日課の1つとなっている。

 慣れとは恐ろしいものである。


 さらに、エ◯直伝の野草と毒草の見分け方を使って、今では野菜も食べている。


 不思議なことに生前は大嫌いだった野菜も、こちらに来てめちゃくちゃ好きになった。

 この世界の野菜はめちゃくちゃ美味しいからである。


 水、火、家、食糧を安定して手に入るようになり、生きる事に安定してくると、次に襲ってくるのが寂しさである。


 そんな寂しさを紛らわせてくれたのが、アロハのおっさんから貰った力のお陰である。


 アロハのおっさんから貰った水を操る力は、火や雷などのアニメで王道主人公の能力みたいな派手さは無く地味だが汎用性が高かった。

 

 イメージ次第で大抵のことはできてしまう。

 なので試行錯誤している内に日が暮れるなんて日もザラにあった。


 さらに、予想では水を操ることにゲームでお馴染みのMP(魔力)切れは無い。

 いくら水を操作しても集中力が低下するだけで他にエネルギーを使っている感覚はない。


 MP切れは無いが、熟練度はあるのだと思う。サバイバル生活初日よりも2ヶ月後の今の方が、操作できる水の量も精密さも格段に上がった。


 最近ハマっているのは水を操作して、好きだったアニメの再現をしてアニメ鑑賞をすることだ。


 自分のイメージ次第でいくらでもド派手に出来るからめちゃくちゃ興奮する。


 そして、この2ヶ月の振り返りで最後に紹介するべきなのは、やはり相棒ができたことだろう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界行ったら水を自在に操れて、俺カッコいい件について 光合成をするミトコンドリア @koou5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ