転生したら皇太子、第2の人生は死なないために本気で生きる

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プロローグ~前編~

『お兄ちゃん!しっかりして!』


『優ゆうくん!優くん!』




 葵あおいとゆずが涙を流しながら俺のことを読んでいるが俺には二人が涙を流す理由わけがわからない。




 ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポー




 耳に聞きなれた救急車のサイレンの音が響いてくる。




『みなさん、道を開けてください』




 俺に向かってがたがたと音を立てながら人が近づいてくる。ようやく俺が交通事故に遭ったことを思い出した。


 三人の救急隊員が俺のことを見て焦り始めた。そのうちの二人が俺のほうに急ぎ駆け寄ってくる。




『出血しています!止血を開始します』


『大丈夫ですか?聞こえますか?』




 隊員が救急活動をしながら俺に語り掛けてくる。




『ん…んん』


『意識あり。今、血を止めてますからね!』




 もう一人の隊員が妹に声をかける。




『お姉さん、彼のご家族ですか?』


『はい、そうです』


『この後、病院のほうへ救急搬送するのでご同行お願いします』


『わかりました』


『あ、あの私も一緒に行けますか?』


『あなたもご家族の方ですか?』


『違います』


『それでしたら、病院のほうに後ほど個人で向かってください』


『そんな、お願いします。私も一緒に乗せてください』


『隊員さん、私からもお願いします』


『ん~、わかりました』


『ありがとうございます』




 その時、先までよりも落ち着きを取り戻していた事故現場に止血作業中の隊員の切羽詰まった声が鳴り響く。




『隊長、出血が止まりません!』


『なに!変われ!俺がやる!』




 隊長と呼ばれた男が今までよりもいっそう焦りだす。同時に心配をしながらも、救急隊員が駆け付けたことに少しずつ平静を取り戻していた二人の心に今までよりも大きな焦りの感情が芽生えていた。


 また、俺自身も血が多く流れていくにつれてどんどん意識が薄く遠のいているのがしみじみと感じていた。




『そんな!お兄ちゃんしっかりして!』


『優くん、おきておきてよ!』


『あ……お…い、ゆ……ず』




 二人の名前を呼ぶが体の感覚がどんどん無くなっていて、もうまともに名前を呼ぶことですら出来なくなっていた。


 そして、意識すらも少しずつ繋ぎ止めなくなっていき、まぶたがゆっくりと落ちてくる。




『優希お兄ちゃん!優希お兄ちゃん』


『優ちゃん!優ちゃん!』




 消えていく意識の中で、俺のことを懐かしい呼び方で呼ぶ二人の声が聞こえた。


 そして、俺の意識が完全に消え去った。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はっ!はぁはぁはぁ、夢か」




 夢の中での死に驚き、勢いよく起きたことで頭では夢だと理解していても身体の方は、夢での内容を感じてしまい心臓が生きるために痛いぐらい素早く動いているのが感じられる。


 そこに、1階の階段下から起床が遅い俺を起こすための母親の声がしてくる。




「優希、早く起きなさい!」


「もう、起きてるよ!」


「えっ!」




 普段だったら声がしてもすぐに起きないのに、珍しく起きていることに、母親は驚いている。




「起きてるなら早く支度して下りてきなさいよ、早くしないとゆずちゃんが来て朝ご飯食べれないわよ」


「わかってるよ」




 正直なところもう少し寝たいが朝飯を食べる前にゆずが来てしまうと、昼飯まで飯抜きになってしまうので、それはさすがに成長期の男子にはきついので体にむちを打って起きることに。




(はぁ~、交通事故に遭って死ぬ夢を見るなんて、朝からついてないなぁ。しかも夢とは思えないほど現実リアルだったしな。とは言っても、交通事故なんて何処かで起きても、巻き込まれることなんてそうそう無いから夢で見るぐらい別にいいんだけどな)




 夢のことを考えながら2階の部屋から1階のリビングに降りると先に起きていた1つ下の妹と一回り下の妹に声を掛けられる。




「おはよう、優希」


「おはよう、優希お兄ちゃん」


「おはよう、葵、日葵ひまり」




 あいさつをすると椅子に座り、おいしそうな匂いを漂わせる朝ご飯を空腹のお腹に流し込んでいく。




「優希がこんなにも早くお母さんに起こされずに起きてくるなんて珍しいわね、雪でも降るんじゃない?」


「えっ!おかあさん、雪さんふるの?」


「日葵、例えよ、例え。実際に降るわけじゃないわよ」


「そうなんだぁ、お姉ちゃんのうそつき」




 生まれてから、まだ雪が積もっているのを経験していない日葵は雪が降るという言葉に反応して、わくわくしていたが母さんに降らないわよと言われると見るからに残念がっていた。




「ごめんね、ひまちゃん」


「いやだ」


「え~、ひまちゃんお兄ちゃんがお菓子買ってくれるから機嫌なおしてよぉ」


「おかし!お兄ちゃんおかし買ってくれるの?」


「葵、勝手に決めるな」


「え~かわいい妹にお菓子も買ってあげないの?」


「買ってくれないの?お兄ちゃん」




 さすがに一回り下の妹に涙目でお願いされたら断れることなんてできやしない。




「お兄ちゃんだぞ、お菓子ぐらい何個でも買ってやるよ」


「やった!お兄ちゃんだいすき」


「よっ!さすが長男太っ腹!私にもなんか買ってほしいな」




 葵がお膳立てしてくるがそもそもの話、葵が原因なのでいくらお膳立てされようが買ってやる気など毛頭ない。




「お前には何にも買わん」


「ぶーぶー、このケチんぼ」


「うるさい、ケチなのはお前の方だ」




 兄弟で言い合っていると、それを見ていた母さんが割って入ってくる。




「優、日葵の前でそんな言葉遣いしないで。葵もへんなこと言ってないでちゃっちゃとご飯食べなさい片付けれないでしょ」


「「は~い」」


「お兄ちゃんとお姉ちゃん大きいのにママに怒られてる、ぷぷ」


「日葵も人のことを言ってないで、ご飯食べなさい」


「は~い」




 親の一言が入ったことにより、兄妹での口喧嘩は鳴りを潜めた。




「あ、そうだお母さん、今日から私たち、テスト期間に入るからお弁当いらないよ」


「あら、そうなの。じゃあ、お昼ご飯は冷蔵庫にあるものでなんか作っといてね」


「お母さん、お昼いないの?」


「お昼から夕方までパートなの」


「そうなの、わかった。適当に作って食べるわ」


「おねがいね」




『おはようございます、天気予報のお時間です』




 みんながそれぞれの準備をしていると、毎朝7時50分から放送している一日の天気予報が始まった。




『本日は近年まれにみる冷え込みで、9時頃からの雨が雪に変わるでしょう』


『雪の影響でお昼ごろには路面が凍結する場合がありますので、転倒や車などでのスリップなどがおきますので、いつも以上にお気をつけて下さい』


『それでは、本日の天気予報はここまでです。それではみなさんいってらっしゃい』


『いってらっしゃい』




 番組が終わると聞いていた日葵がはしゃぎ出した。




「やった!雪さんふる~」


「へぇ~、雪が降るなんてめずらしいわね」


「よかったね!日葵」


「うん!保育園でいっぱい遊ぶ!」




 そんなこんなで、時間が経つといつもの時間にインタホーンが鳴った。


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