第2話 下校
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
鳴った瞬間が勝負である今日は一時間目なので使ったものだけを片付ければいいので、おれはボールとグローブだけを片付けて早く教室へ行かないと次の授業が始まってしまう、他のみんなは多少遅れても笑顔でごまかすことができるが俺はできない、なので早めに席に着き次の授業の準備を済まさなくてはならない。
俺は別に真面目ってわけじゃない、むしろ怠惰である、しかしこんな静かでしゃべんないやつが成績も悪い、コミュニケーションも取れない、何もできないやつとだけは思われたくないという気持ちだけで日々勉学に励んでいるが、とてもつまらないので授業中はすきを見てはさぼっている。そのせいで家ではより勉強しなくてはいけなくなり、時間の使い方が悪いことは十分に分かっているがそれがなかなかできないのだ。
「はいみんな席について、えーっと...松本がいないな、あいつどうしたんだ」
「先生!あいつトイレだよ」
「松本め、中休みに行けよ!えー、はい、次は佐々木は休みの連絡が入っています、えーっと、終わりだな、じゃあ授業始めるぞ」
こういったように授業の最初はたいてい不真面目な生徒に目が向くおかげで俺みたいな目立たない生徒は全く警戒されない、よってさぼれるタイミングが出来上がってしまうので仕方なくスマートフォンでソシャゲのデイリーをこなす。
「じゃあここの問題を、トイレ行ってた松本お前が解け」
「わかりません!」
「わかりませんじゃねーんだよ、最初は何をするんだよ」
「移行ですか」
「何言ってんだよ全く、三乗根の因数分解の公式使うんだろ!そっからどうすんだよ」
「えー、おいどうすんだよ、お前わかるか」「sin2乗+cos2乗=1を使うんだろ」
「ありがとう、えーsin2乗+cos2乗=1を使って1にします」
「そうだな、でそっから...」
こういう当てたやつを絶対にこたえさせようとする融通の利かない先生はカモ以外の何物でもない、できないやつは鼻からやる気がないので相当時間かかるし、他の人に対する目の緩くなる、グダグダしている時間で自分が当たりそうな問題を先に解いておく、この先生は基本席順で当ててくるタイプである、最初の松本は例外だが、前の授業の最後が木下だった気がするから、そっから二番目に俺が当たるので、今松本が解いている問題が一番の問題なので俺は三番の問題を解けば俺はあとは自由になる、別にノートを提出するわけでもないし、当てられるところ以外は全く持って解く必要がない、こんな授業だから初歩的なことすらできないやつがたくさん出てくるんだ。
(そして昼休みになった)
はぁーようやく昼か、なにやら陰キャ業界では便所飯なるものが流行ってるそうじゃないか、なぜあんな所に行ってわざわざ飯を食べるのか意味が分からない、たぶんいじめられて閉じ込められてるに違いない!本当にかわいそうで陰湿だ!
トイレというのは陽キャがこぞって集まり、雑談し、髪の毛をセットアップするところであって陰キャの人たちが弁当持っていけるような場所ではない。だったら一番早くいけばいいじゃんと思うだろうが陰キャで回りを気にする奴がいち早く授業が終わって弁当持って便所に行けるか?そもそも各教室ごとに授業が終わる時間が微妙に違うので、誰にも気づかれたくなければ自分の教室が一番早く終わって一番トイレに教室が近くなければいけない、よって便所飯など非現実的である。
私の場合は堂々と自分の席で飯を食う、絶対に席を離れてはいけない、少しでも席を離れようものなら、もう席なんて存在しない、友達と食べるといい他人の席を勝手に使う輩が存在するからだ、一回そんな思いをしたことがある、その時は普通にトイレをするがごとくトイレに行きそこで昼休みぎりぎりまで時間をつぶした、結局飯は食べることができなかったので空腹のまま一日を過ごした。
なので昼飯を食べるためには、昼休みに入ってから絶対に席を立ってはいけないのだ。
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
午後の授業は!
英語だと...もっとも終わっている授業だ、話にならない、こ...この授業は!陽キャ専用授業!!!私に受ける資格などないのだ!
なぜなら、ペアワークが主だからだ、教科書の内容を互いに読みあったり、主人公になりきってペアで演技したりする、普通にやってくれるのなら何も問題ない、この学校は隣でペアを組む仕組みになっていて、自由にペア組んでいいよ、と優しい先生アピールをしてくるわけでもない。
修学旅行の班を決めるときはひどかった、自由に組んでといい本当に自由に組ませてしまい、見事に俺だけが余った、結局どこかに入れてもらいなさいと言われたが、誰も名乗り出ずに結局先生がこことかいいんじゃないかなと勧めたところに頭を下げていくことになった、本当に先生はクラスを見ていないし弱者の気持ちがわかっていない!こういうやつは一部の生徒に好かれるために他を切り捨てる野蛮な思考の持ち主だ!こんな奴が人に道徳とか説いてるの見ると反吐が出る。
英語の授業に関してはそんな心配がないが、ペアによって精神が削られる、ペアワークを無視して後ろを向いて話すのだ!
そして後ろのペアと一緒になってやりだす始末、俺のことなどいないものとしてふるまってくる、この時間を教科書を読んでいるふりをしながら先生の目をごまかさなくてならない、もはや授業ではなくなる、周囲の風景と同化する修行と化すのだ、こんなものは授業ではないし上がるパラメーターは学力じゃなくて精神力なのである。
「今日は二人になってこの単語の意味を調べて例文を互いに作り発表してください」
「うわー、全部わかんねーお前どこやるんだよ」後ろも見ながら言う
「俺これやるよ、お前はこれやって」隣のやつに言う「俺一つ意味知ってるのあるぜこういう意味だ、例文は自分で頑張れよ」と紙を見せながら前のやつに言う
「ありがとな、やっぱりお前頭がいいぜ」後ろを見ながら言う
ふざけんな!あんたら喋ったらいいじゃんなんでわざわざ紙に書いて意味伝えてんだよ!そんなマジックで適当にとったカードを仲間内だけに確認させるように慎重に見せてるんだぁ?わかんねー隣のやつなに教えてもらったんだよ...たぶん簡単そうなやつだろどうせ、じゃあ難しそうな、carnivoreにするか、意味わっと、
(地上または水生の肉食哺乳動物)なるほど、うーん、society is like a carnivre(社会は弱肉強食のようだ)
こんなかんじでいいか
「よし、じゃあ当てるから自分が調べた単語の意味と例文を答えてください、佐々木お前言ってみろ」
この先生はめんどくさい、完全ランダムだから毎回ヒヤヒヤする
「はい、次ね、えーっとじゃあ安藤」
まじか!隣のやつの後ろじゃん、あの偉そうに言ってたやつ、何調べたんだよ
「僕はcarnivoreを調べました、意味は肉食動物全般です、僕が作った例文は、Tyrannosaurus Rex was a large carnivore(ティラノサウルスは巨大な肉食獣だった)です」
「Thats good!いいですね」
おいおいおいおい俺のと一緒じゃんびっくりさせんな、ということは隣のやつとは違うってことだとりあえず安心した。
「えへへ、こういうのはなネットに書いてあるやつをパクればいいんだよ、提出物でもないしな」
ふふふふふ、独創性がないなぁ、見てろよ社会では俺のような幼稚だが独創性がある文章をかける奴を求めてんだよ!
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
終わったーこれで帰れるな、俺は帰るときは早い、帰りのホームルームが終わる前に準備を済ませ、終わった後のうるささを盾に教室から去る。
学校から出てしばらく歩いたところに分かれ道がある、そこからは全力で走って帰る、誰にも見られたいような一本道まで来たら「心の声かいほうだぁぁ!!」
「ようやくしゃべれるよ窮屈だったー!!!」
こうやって一日の憂鬱をできるだけ晴らそうと全力疾走で叫ぶ、ところどころに信号がありこれがなんともうざい。
「疲れてきたな、ぜーぜーぜー、あ、信号か、青だ!いっけー-----!」
「いったーー-終わり、疲れたな、終わろう」
いつも信号付近で心揺さぶられる、今日は青信号わたりきって、ぶっちゃけまだ体力があるがもう走る気が起きない、赤信号だとせっかく乗ってきた勢いをつぶされて再び走る気が起きなくなる、ここで走れる人間になりたいと思っているが全くできない、本当に精神力が弱いことを痛感しいやな気持になる。結局最初だけ走って後の帰り道は歩いて帰った。
「ただいま」
家だ、家でやることといえば、最近はたいして面白くもないゲームを惰性でやって時間をつぶす。
陰キャなのでつつましく生きていきます @iidazyunn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。陰キャなのでつつましく生きていきますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます