Ⅲ
少女を尾行していた四人組の男達は、少女の姿を失う。
「あの野郎。どこに行きやがった⁉」
「いい獲物だったのに…くそっ!」
男達は、ナイフや銃を手に持っている。
(やはり、そうでしたか。どこに行っても治安は悪いものですね…)
少女は姿を現し、男達の後ろに立つ。
「さて、あなた達の覚悟はできていますか?」
少女は、男達に話しかける。
「いたぞ‼」
「この野郎! どこに隠れていやがった⁉」
男達は少女を囲む。
「はぁ…幼気な少女を四人で囲みますか…。あなた達には、プライドというものがないんですか?」
少女は、ため息を漏らす。
「プライド? そんなの知らねぇーな」
「おい、殺さずに捕らえろよ…」
男達は、戦闘態勢に入る。
少女は、周囲を警戒する。
「分かりました。私は手加減してあげますので、全力で掛かってきた方が身のためですよ」
「ふざけやがって!」
男達は、一斉に襲い掛かってくる。
少女は、まだ、動きを見せない。
(おじけついたか…?)
あと少しで少女を捕らえられる。
だが、その瞬間、少女の周りに風が吹き荒れる。
男達は宙に浮き、吹き飛ばされる。
風は止み、少女は平然と立っている。
「こんなもんですか…力の差がありすぎますね…」
フードが取れ、少女の顔が姿を現す。
赤毛の長い髪に綺麗な顔立ち。黒いスカートに白い服装。十代くらいの少女が、男達を見下ろす。
「てめぇは一体…何者だ⁉」
リーダーの男は、怯えながら問いただす。
「魔術師ですよ」
少女は答えた。
「魔術師…その赤い髪…まさか‼」
「はい。そのまさかですけど…」
リーダーの男は、焦った表情をする。
「〈赤毛の魔術師〉リーシャ・エインフェルトかぁあああああ!」
「「「ええええええ!」」」
男達はその名前を聞いて、立ち上がり、後退していく。
「そんなに驚かなくてもいいでしょう。たかが、魔術師ですよ」
リーシャはそんな男達を見て、ため息を漏らす。
「さて、これからどうしますか? まだ、やりますか?」
リーシャは、杖を突き付ける。
「に……」
「に?」
「逃げろぉおおおおお! あんな化け物とやり遭っても、命がいくつあっても足らねぇ‼」
と、リーダーの男が叫ぶと、男達は逃げ出す。
「はぁ…。情けない人たちですね…」
リーシャは逃げる男達に向けて、魔法を唱える。
「〈バインド〉!」
男達の動きが止まる。
リーシャは、男達の方へと近づいていく。
「ひっ⁉」
リーダーの男は、小さな悲鳴を上げる。
「そんなに驚かなくても殺したりはしませんよ」
リーシャが言った。
「私の質問に答えてくれますか?」
「な、なんの質問だ?」
リーダーの男は息を呑む。
「このルーニアにある謎の遺跡についてご存じですか?」
「あ、ああ…。あの変な遺跡のことか…?」
「はい」
「一度だけ入ったことがあるが…深いところまでは入ったことはないな。不気味悪くて、すぐに引き返してしまったよ…」
「そうですか…。他には何かありましたか?」
「そうだな。変な文字とかが、壁に彫ってあったな」
男はリーシャの質問に、素直に答える。
「なるほど…。ありがとうございます…」
「ふぅ……」
男は命拾いしたと思った。
「でも、あなた達は犯罪ですので、ギルドに連絡させていただきます」
「この女‼」
リーシャは近くの電話ボックスに行き、お金を入れ、シャハタルの本部に連絡し、男達を連行するように伝えた。
「あ、言って置きますけど…。それを無理に外れないようになっていますから…。逃げようとしても無駄ですよ」
リーシャは、男達に忠告する。
それから一時して、ルーニアの警察が来る。
リーシャは男達を引き渡した。
ようやく本来の目的に戻ろうとしたリーシャは、腕時計を確認する。
時計の針は、三時半を指していた。
(もう、こんな時間ですか…。太陽はまだ、沈んでいませんが…今日はここまでのようですね)
リーシャは、今日、泊まる宿を探し始めた。
× × ×
一方、その頃、ロイは——
「さすがに三日間の列車の旅は…キツイ…」
ロイは、列車の席から移動し、仮眠室で横になっていた。
列車は、シャハタルに向けて走り続ける。
赤毛の魔術師と義眼の錬金術師 佐々木雄太 @yuta4
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