魚が釣られる理由

説也

魚が釣られる理由

じつは僕たち、海の生き物は、意識が繋がっている。


ぼくは一個の個体であり、全体を構成する一部でもある。


どの海で誰が生まれたのか

どの海で誰が消えたのか


その全てを僕たちは知っている


なぜそれが分かるのか、僕たちは知らない


海水のなかを意識が伝播するのか

プランクトンが教えてくれるのか


人間は忘れてしまった

海に生きる生物が人間よりも賢い事を


海は巨大な脳の塊なのだ


なら、どうして釣り針にひっかかるのかって?


そうだなぁ

こんな事を聞いたことはないか


イラン南部で79頭のイルカが自ら命を落としたという話を


海の生き物は個よりも全体を優先する

増えすぎた種はときに自ら命を落とし、数を減らす


僕たちは神ではない


生きる為に、生命(いのち)を食べる事はあるが

自らの都合だけで世界を・・・いや生態系を変えようとは思わない


「個としてのぼく」と「全体としての僕」を天秤にかけ

ぼく自身の在り方を決定する


例えば

他の生物の「糧」としての在り方 も そのひとつなのだ


あくまでも、決定するのは「個としての自分」の在り方だけ


だけど・・・

「沿岸の開発」や「環境汚染」により、浅海域(せんかいいき)に住む多くの固有種が命をおとしている


このまま、固有種の減少に歯止めがかからない というのであれば・・・


ぼくは・・・他の生物の「糧」としての在り方をやめなければならない


そうなれば


簡単に釣られるような場所に住む必要もなくなり

美味しくて栄養がある必要もない


暗くて、深い・・・誰の手にも届かない深海に住むこととなり


きっと僕を食べるモノは減っていくのだろう

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魚が釣られる理由 説也 @setsunari

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