第11話 [スノーダルマ] 上

「何をやってもダメね。」

「根性が足りない」

「一人の方が楽しそうね。」

「私、いない方がいい?」


「えっ……。あっ……。」


「やめてよ。そんな目でおいらを見んなよ。」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>

〜マルタ村〜祠〜


「はぁ……。」


 マルタ村に雪が降った。おいらは窓を見ると雪はリンのようなかすかな光を放つ。


「なんだ。昔の夢か…。」


「ポン太!」

 振り返るとチョコがニヤニヤとしながらおいらを見ていた。手に手袋を嵌めており、首には赤いマフラーを巻いている。


「遊びに行こう!」

 そう言うとおいらを肩に乗せて村の外れにある祠に向かって走っていった。


 うぅぅ。寒い。


「すごぉーい!こんな雪が積もってるの初めて見た。」


 積もったばかりの白い地面に足跡をつける。


 村はずれにこんな所あるなんて、知らなかったなぁ。


 おいらの視線の先に木造でできた小さな木の祠を見つける。


「雪だるま作るよ!ポン太は、目に使えそうな石持ってきて!」


 チョコは雪を拾い上げ、両手でキュッキュッと丸めて行く。


 おいらは軽く頷いて近くにある石を探しに向かう。


 それにしても寒いなぁ。早く家に帰りたい。地面にそれっぽい石を見つけて口の中にしまう。口の中が満帆になったので、一度戻る事にした。


 戻る途中に小さな雪だるまを見つける。



 あの雪だるま……動いてないか?

ぴょんぴょんと雪だるまは跳ねながらおいらに近づく。


「どうか!どうか!僕のお願い事を聞いてくれませんですか?ですか?」


 雪だるまが喋ったぁぁあ。


「ごめん、今は忙しい。」


「そんな拙者なぁ。話し、話だけでも!」


「また明日な!」


 おいらはチョコの元へ向かう。


「ポン太おそーーい!」


 チョコの隣には、一五センチ位の雪だるまがちょこんと置かれていた。少し不恰好でボコボコしているが、どこか可愛らしさを感じさせた。


 おいらは頬に溜めた石を、チョコに見せる。お気に入りの石を拾い、雪だるまに目をつけた。ふふっ。両目のサイズバラバラ。



「完成!」


チョコは満足そうにおいらに言った。


「早く帰ってお母さんに見せてあげなきゃ。」


 雪だるまを持ち帰り、玄関前に置くのであった。 


>>>>>>>>>>>>>>>>

〜家・[就寝時]〜


あれ……。なんかお腹あたりが冷たい。まさかこんな歳になってオネショ…。いやいやないない。もしそうならあったかいはずだ。


 恐る恐る目を開く。


「起きてください!起きてください!」


 おいらのお腹の上でピョンピョン跳ねる雪だるま。なんでこんな所に居るんだ?


「明日、話聞くって言っただろ?」


「えぇ、ですから0時ピッタシに会いに参りました。」


 自信満々の雪だるまを見て、おいらはハァとため息を吐いた。一本取られた。


「わかったよ。話だけでも聞くよ。」


「ありがとうございます。」


雪だるまをは、頭を下げて話し始める。


「夏を見せて欲しいのです。」


「夏?」


「はい。太陽がジリジリと大地を照らし燃えるように熱いと聞きました。僕はそれを見るのが夢なのです。」


「……ごめん。それはおいらに叶えられない。」


 雪だるま正式名称スノーダルマ。冬限定のモンスターで春の上旬になると溶けてしまう。夏まで溶けずに残る事は不可能だと思う。


「アハハ。そうですよね。」


 スノーダルマは悲しそうに笑う。なんとかできないかなぁ。


 ……いや待てよ。たしか一年中夏の場所があったような。サニービーチ。ハワイをテーマにしたビーチ。ゲーム設定上は一年中夏だった筈。現実になった今その設定は生きてるかわからないが。行ってみる価値はあるはず。


 問題はマルタ村からかなり距離がある。無理だ。着く頃には春になっている。


 おいらはスノーダルマをじっと見つめる。諦めずに一人でも探しに行きそうな目だ。


 あぁ、もう。おいらこう言うの弱いんだ。


「サニービーチ。今から行っても間に合うとは限らない。夏と言う保証もない。それでも行くか?」


「はい!」


 スノーダルマは、嬉しそうに頷くのだった。


「朝になったら出発するぞ。」



そういっておいらは瞳を閉じた。



>>>>>>>>>>>>>>>>

「さぁ。いきましょう!どんどん行きましょう。」


「あわわわ。元気だな。」


「今更だけど、僕スノーダルマのノーマだよ!」


「ん。おいらポン太だよ。」


「えっ!あのポン太様ですか!!!」


 どうやらノーマはおいらの事知っているみたいだ。


「知ってるのか?」


「有名人ですよ!動物のなのに、困ってるモンスターを助けるスーパーヒーロー。裏では人間どもを下僕として扱い、世界を操るダークヒーロー!」


「ブホッ?!なんだよそれ……。」


「本当かどうかわかりませんが、風の噂で聞きました。」



 …また噂って、誰が流してるんだよ。おいらはそんな凄い奴じゃないよ。


「ノーマ、その噂をしている人がいたら嘘だって伝えてくれ。」


「嘘じゃなかったですよ。現に僕を助けてくれているじゃないですか!」


 ノーマはキラキラとした眼差しを向けた。


「聞く耳は無さそうだな。」


「雪ダルマに耳はないよ?」


おいら達はサマービーチへと、向かうのであった。

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転生したら【リス】だった。おいら絶対人間に戻ってやる! @jimgai

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