サクラアゲートのダイ冒険 〜螺旋の継承者〜
おしゃんしゃい
僕の冒険はこれからだ
僕の名前はサクラアゲート18歳Dランク冒険者だ。
僕は今から人生初のダンジョンを攻略する予定なのだが、また錯乱してしまいそうだ。だが今回だけは絶対に失敗は許されない。
『オーイ チェリーまたブルって帰ってきたのか?』
『だからDランクのままなんだよ』
『錯乱ばっかしてる坊主じゃ無理だって』
過去の辛い記憶が蘇る……
未知の場所に対する恐怖心から僕は錯乱してしまう。
そして……挑戦する前から逃げ出してしまうのだ。
しかし、僕はいつも父の言葉を思い出す。
『落ち着いて攻略すればダンジョンは怖くない 最奥まで辿り着けたらきっとお宝に出会える 俺は今でもそのお宝をずっと大事にしている』
そんな時、母は静かに微笑みこう言うのだった。
『あら? 入り口を間違えそうになってた人の言葉とは思えないわね? ふふふ』
どうやら父も錯乱までいかずとも、やはり緊張はしていたし、そんな状態でも攻略は出来たらしいのだ。
僕は覚悟を決めた。今まで一般開放されているダンジョンすら潜ったことはない。しかし、情報収集やイメージトレーニングは欠かさなかったし、装備も整えた。
僕はネームドダンジョンを攻略する。
通称『箱入り』
様々な手続きをふみ許可を得ないと挑む事が出来ないダンジョンだ。常に厳重管理されており、ドーム状の防壁の中で、入り口すら何かで隠蔽されているらしく、最高の難易度という噂だった。
初のダンジョンがネームドというのは、無謀だとも思えた……しかし、父もそうだったらしいのだ。
僕も攻略してみせる。絶対に。
僕はドームを越え、秘密のベールを剥がし、手前にあったジャングルを乗り越えて、何とかダンジョンの入り口までやってきた。
僕は今ダンジョンの入り口でタっている。だが、入り口には扉があり、固く閉ざされているのだ。
正式な許可を得て、ダンジョンまでは何の問題もなくやってきた。今は逆に冷静であり錯乱はしていないが、手掛かりが見つからず、途方に暮れているのだ。
ダンジョンの扉はボタンを押すと開くと聞いていたのだが、どこにも見当たらないのだ……通常扉の上方にあるはずなのだが、初めて見るため正確な位置もわからず、闇雲に触りまくっていた時に隠されていたボタンをやっと見つけた。
見つけたんだ……押しても摘んでも引っ張っても扉は反応しない。落ち着いて思い出す……そうだダンジョンのボタンの感度は個体差があり、丁寧に優しく力加減を変えながら試すといいと書いてあった。
色々と試しているとダンジョンが震えたような気がした瞬間扉が開いたのだ。
中を確認してみるとジットリと湿っており、デコボコの床と暗い通路が見えるのみだった。
そして警戒しつつも中に入ろうとすると、何かが邪魔をしてうまく入れない。悩んだ挙げ句強引に進むことにしたのだが、赤い液体が絡み付いてきた。トラップかと焦り、慎重になるべきだったかと後悔したが、何も起きなかったので更に奥へと入ってみると、かなり熱く通路全体に熱が籠もっていた。僕は自分自身を奮いタたせると、奥へ奥へと進んでいったのだった。
噂ではダンジョン固有の生物や、トラップ、毒物などが存在するケースもあるらしく、右へ左へ前へ後ろへ行きつ戻りつ確かめて、天井の怪しいところを念入りに調べていると、急に床が蠢き出した……否、床だと思っていたのは、大量の巨大ミミズだったのだ。
油断はしていなかったが、不意を突かれた僕はアシをとられ、あっという間にミミズに絡まれてしまい身動きがとれなくなっていた。膨大な数だ……恐らくは千匹を軽くこえているだろう。
噂では巨大ミミズによりそのまま果てる冒険者もいたと聞く。僕はこのまま終わるのか?これでいいのか?
否、断じて否、ずっとずっとこんな時のために足腰を鍛えてきたんだ。
アシを動かし先へと進むと、何とか頭が出せた。
勢いでそのまま奥へとツキ進むが、疲労が激しい。
ミミズゾーンは抜けたが限界が近づいており、ダンジョンの最奥にあるという秘宝の部屋を探す。
そしてついに辿り着いたんだ。部屋をノックすると何かが聞こえた気がするが、かまわず中に入った所で力尽きた。全てを出し切った。遠のく意識の中で僕は感じたんだ……これがお宝……僕の螺旋はきっと引き継がれる。
そして父と母の大切なお宝の正体も知った。
ダンジョンはお宝を産み出す大切な場所なんだ。
サクラアゲートのダイ冒険 〜螺旋の継承者〜 おしゃんしゃい @urawaza
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