第7話
「一体桜ちゃんに何したのさ?」
「別に。ただ、煙草1本分の話に付き合ってもらっただけ。」
「はぁーいでました俺特になにもしてねぇぜ感!」
「意味がわからねぇ。」
「そういうのがモテるんだぞ!って事ですか?」
「海斗くんせいかーい!これあげる!」
「僕が作ったやつですけど頂きます!」
「お前らなぁ…」
呆れたように溜息をつけば、ピーンポーン、とあまり鳴る事の無い音がした。
漆間が玄関まで行き扉を開ければ、そこには桜の姿があった。
「こんばんは漆間さ、ん…」
「おー。うちの三原が拉致って悪かったな。おい!迎え来てんぞ!!」
「あ!姉ちゃん…って、漆間さん服!!着て!!」
「あの阿呆!だから着ろって言ったんだよ!!」
三原が適当に服を引っ付かみ漆間へ投げ付けた。
うるせぇなぁ、と思いながら渋々Tシャツを着た。
「あ、ああの?」
「風呂上がって暑いから着てなかった。悪ぃな。」
「い、いえ!!それより、うちの海斗がお世話になりまして…!」
「うん、だから三原が勝手に拉致っただけだから。」
「ごめんねぇ桜ちゃん。海斗くん拉致っちゃった!勢いで!」
「そこのお兄さん。いい所知ってんだけどどう?って、ナンパだよね。人生初男にナンパされたよね。」
「あとおつまみ美味しかった!また今度作って!」
「仕事がなければいいですよ。場所は此処で!」
「OK!」
「来んな!!」
「海斗!漆間さんに迷惑かけない!」
すみません、と再度謝る桜に、漆間は別に、とだけ答えた。
「それではまた!」
「近いうち連絡するねー!」
「待ってます!」
「もう海斗ってば!」
「まぁ、何だ。夜でも気ぃつけろよ。」
「大丈夫です!車なので!」
「…家、帰ったら連絡くれ。」
「え?」
「車でも、何があるか分からねぇからな。」
「わ、わかりました…連絡します…」
「おう。じゃあな。」
こうして海斗と桜は漆間の家から帰って行った。
リビングに戻れば三原がニヤニヤした顔で漆間を見ていた。
「やるねぇ漆間。」
「黙れ拉致野郎。」
「いいと思うよ、俺はそういうの。」
前に進めなかった漆間が、前に進み始めた。
三原はそれをずっと見てきたからこそ、自分の事のように嬉しく思う。
「頑張れ、漆間。」
「……お前もな。」
少しずつ、一歩ずつ。
確かな変化を感じながら、進んでいく。
また1つ、季節が移り変わろうとしていた。
雪解け 二階堂由美 @ykhm-0530
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