第6話
《 ーードラマの方はもう後半となりましたが、いかがですか撮影は?》
《 順調ですよ。ただやっぱ、俺この役あってる?ってまだ思うんですよね。》
《 犯罪者やサイコパスな役柄のイメージが強いですからね。》
《 今度は警察官役だなんて、何かの運命何でしょうか?》
あはは、とテレビの中で四季とMCが笑っている。
それを濡れた髪の毛を乱雑に拭きながら、ペットボトルの水の蓋を開けている漆間が見ていた。
「あっははー運命運命!」
「酔ってます?」
「酔ってない!テンション高いだけ!」
「……おい。」
「んー?」
「どうしました?漆間さん。」
「どうしました?じゃねぇ!何で三原と一緒に四季がいやがる!!」
しかしそこには、缶ビールを開けまくっている三原と、肴を作って出している海斗がいた。
「あ、あと俺は海斗で。外で四季なんて呼ばないでください。」
「ここは外じゃねぇ俺の家の中だ。」
「誰かに聞かれたら困るじゃないですか。」
「俺警察だぞ。壁の薄さくらい考える…いやそうじゃね、その話はどうでもいい。」
「良くないですよ!」
「三原!!」
「んーとー飲んでてー飲み直そうって漆間ん家行こうと思ってー歩いてたらー仕事帰りで桜ちゃん待ってる海斗くん見つけてーお持ち帰りした!」
「俺の家にな!!」
疲れて、あ、三原か、といつも通りに上げて、頭が回ってきた所で後で文句言ってやると意気込んでお風呂から出れば海斗がいた。
それが先程までの会話。
漆間は帰ったら先にお風呂、というスタンス。
そこはブレずにいつも通り入ってきた。
それは長く一緒にいる三原も承知の上。
ガシガシと頭を掻きながら仕方ねぇな、と冷蔵庫を開けて、持っていたペットボトルを中に入れた後ビールを取り出した。
「テメェ飲み過ぎなんだよ。」
プシュ、と片手で開けながらキッチンに置きっぱなしの盛られた料理をつまみ食いした。
「飲み直すとはそういうことですぞ漆間くん。」
「金払え。ストックしてた分も飲みやがって。」
「いつも酔い潰れてる俺からお金出してるお前に言われたくねぇ!」
「え、嘘…酷い…」
「後でその分財布に入れてんだろ。」
「そうだよ!!倍で返ってくるから文句言えねぇんだよ!!悔しい!!」
「え、イケメンだった…」
「口は悪いけどコイツ実はイケメンだからな?知ってるからな?お前モテんだからな?」
「俺よりモテるお前に言われたかねぇ。」
「何なんだよお前!!去年のバレンタイン1個お前の方が多かったくせに!!」
「たまたまだ。」
「顔良くて?背が高くて?ガタイ良くて?素っ気ない態度がいいと女性警察官に人気なんだぞ?お?」
「顔良くて、背が高くて、スラリとした手足に優しさが溢れると女性警察官に人気のお前が何言ってんだ。」
「俺そんな風に思われてんの?」
「生活安全部の女が話してんの聞いた。」
「マジでか。」
「何これ褒め合い?褒め合いなんですか?」
「ノリだ。」
漆間は摘んでいた肴をテーブルに運び、三原の前に座った。
三原も漆間もお互いを見ることなく、テレビを見ながら先に缶ビールを突き出していた三原の缶ビールに、自分の缶ビールをコツンと当て、さも当然のようにお互いビールを煽った。
「何か意外です。」
「何が?」
「漆間さんって、そういうノリするんですね。」
「普通にするぞ。」
「こう見えて漆間はノリいいから。というか服着ろ!」
「着てんだろ?」
「上裸は頂けないぜお兄さん?」
「暑いんだよ。」
「鍛え上げられた肉体見るのがクソ腹立つから仕舞えって言ってんの。」
「なんだよ羨ましいか?」
「腹立つ!!」
「お前だって鍛えてんだろ。世間ではお前の事を細マッチョという。」
「そうだけどさぁーこのガタイが男!って感じするじゃん?ねぇ?海斗くん。」
「そうですね。俺も役で鍛えたことありますけど、漆間さんみたいにはなれなかったですね。羨ましい…」
「お前まで何言ってんだ。」
「そう言えば桜ちゃん連絡きた?」
「あ、はい!ここまで迎えに来てくれるそうです!それまでには服着てくださいよ漆間さん!」
「たぶんな。」
漆間は置いてあった煙草の箱から1本取り出し火を付けた。
「…漆間が煙草をもう一度吸う日がくるとは…」
「そのまま禁煙してればよかったのに。」
「本数は減らしてる。」
「そういう問題じゃないですよ。」
「一体、何があったんだろうねぇ…?」
三原はニヤニヤしながら漆間を見た。
まるで全てお見通し、かのように。
あの日の事を全部言ったわけじゃない。
だが、三原には分かってしまうらしい。
「……テメェのアドバイスが効いたんだよ。」
「んー?なにー?聞こえなーい!」
「何時になったら告るのか見ものだなーっつったんだよ。」
「うっせ!!ちょっと桜ちゃんと上手くいったからって調子乗んなよ!!」
「聞こえてんじゃねぇか。」
「……いや、姉はあげませんよ!!」
「急に何なんだよ!」
こんなにツッコミが疲れるとは、漆間はこの感覚が少し懐かしく思えた。
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