この胸の悲しみと共に生きてゆくよ

君と別れて随分たつ主人公が思い出して帰宅するだけの話。
だけれども、上手く書けている。

書き出しの「最近、寒くなってきた」が良い。
物語の季節を示しながら、作品全体を暗示させている。

前半は受け見がちな主人公だが、君を探す自分に気づき、思い出していくことで、後半は回想に転じてドラマを動かしている。

電車の乗車や下車、改札をくぐり駅前の様子が描写されていて、現実味がある。

主人公はなぜ、君と別れたのか。
「僕が弱かったから──」といっている。
頼りなかったのかもしれない。

ラストに星が一つみえているので、これからの主人公の人生に希望がありそう。