私が「ざまぁ」系を書かない理由~クズキャラが書けない~

kayako

ざまぁ系ってどうやって書くの?

 

 現在、web小説界隈ではいわゆる「ざまぁ」系が大流行である。

 周囲でも色々な「ざまぁ」系が見られるが……

 当方、そういう「ざまぁ」系は書いたことがない。

 いや、作品内容が結果的に「ざまぁ」な話になったことならある。しかし、狙って「ざまぁ」したことはない。


 じゃあ何故「ざまぁ」系を書かないのかって?

 勿論、そうやすやすと一時の流行なんぞに乗らない為さ!!



 ……などと言ってしまうのはたやすいが。

「書かない」のではない。「書けない」のである。



「ざまぁ」系の作品に必要なもの。

 それは、「主人公を徹底的に貶める敵キャラ」である。

 ただ貶めるだけではダメであり、「徹底的に」である。

 こいつは「ざまぁ」されて当然!と読者に思わせるレベルのドクズキャラを書かねば、「ざまぁ」作品は成立しない。

 何故かというと、主人公がそのクズキャラに対して「ざまぁ」する瞬間の快楽が、「ざまぁ」作品を「ざまぁ」作品たらしめる唯一無二のものだから。

 そいつに一片でも同情の余地を与えたり、少しでも好まれそうな描写をすれば、途端に「ざまぁ」の快感は消え失せてしまう。

 読者の全員が「こいつをヤれ!!」と思うレベルのクズキャラでなければいけない。

 ここで言う読者全員とは、混じりっけなしの100%全員、である。

 ほぼ全員、ではない。一人の例外もなく全員、である。



 そんなキャラ書けるのかって?



 書けないから悩んでるんです。



 そういうクズキャラの代表格としては、鉄血のイオク、アルスラーン戦記のボダン、ドラクエ8のチャゴスなどがぱっと思い浮かぶものの、自分でああいうキャラを書けるかというと、非常に難しい。

 キャラを作る時、どんなモブキャラであろうと一つの命と考えてしまいがちだから。

 どれほど残酷に囚人や奴隷を嬲る冷酷キャラでも、家に帰れば愛する妻がいて娘がいて当たり前で、そうでなければお酒ちびちびやりながら一人で愚痴ってて……などと考えてしまう。

 主人公の敵であろうと、主人公の家族を殺した仇だろうと、それは同じ。

 そのキャラは確かにクズキャラだけど、クズがクズな行動をするにはそれなりの理由があってウンタラカンタラ……


 うん。だから現実でも昔からクズに騙されやすくいじめられやすく(ry



 とにかくそういう理由で、私は「ざまぁ」系におけるドクズキャラが書けない。

 そのキャラが考えに考えた末の行動が結果的にクズ行為になることはあっても、狙って根っからのクズには出来ない。

 クズキャラを書いたとしても、クズ行為に至るまでの過程や心情を詳細に書いてしまう。時には主人公より念入りに書いてしまうことさえある。

「ざまぁ」されるドクズキャラに、そうなった背景など一片たりとも不要なのに、である。

 ちょっとでも同情してしまいそうな背景なんぞ書けば、「ざまぁ」の快感が減ってしまうではないか。



 じゃあ、そんな自分がドクズキャラを書くにはどうすればいいのか。

 クズのクズに至る過程など不要! プロローグから全力で、主人公もしくはヒロインを貶める役をやってもらわねばならぬ!!

 というわけで、とりあえず思いつくところとしては



 ・主人公の大切な人間(例・ヒロイン、家族、仲間など)を奪う、殺す、絆を引き裂く

 ・主人公が大切に作り上げてきたもの、もしくは大切にしていたもの(例・絵、漫画、小説、料理、家族の遺品など)を壊す、焼く、破る、捨てる

 ・主人公を徹底的に貶し居場所を失くす(例・パーティ追放など)

 ・動物、子供、老人などの弱者をいたぶる

 ・DV、いじめなんて当たり前

 ・上記の行動を冒頭から、複数回繰り返し行なう

 ・これらの行動はクズキャラ本人の気まぐれや自分勝手な欲望によるものでなければいけない(復讐とか王の命令とか、他の仲間を守る為仕方なくとか、やむを得ない理由であってはならない)



 いや、こんなん書けるか自分!?

 モブキャラならまだしも、「ざまぁ」すべきキャラって主人公の当面の敵=主要ネームドキャラでしょ?

 プロローグで主人公を貶すぐらいは何とかなるかも知れない。しかしその後で絶対書いてしまう、そいつが主人公にクズ行為をした理由を! そいつも過去誰かにいじめられていたとか親にDV受けてたとか何とか! だ、駄目じゃないか!!



 というか私、誰かの大切なもの、誰かが懸命に築き上げたものを一瞬でぶち壊すような話自体が苦手です。

 上記項目でいうと2番目ですね。このタイプのシーンがホントに駄目。

 昔の朝ドラで、ヒロインが妹たちの為にお給料はたいて豪華なケーキを買ってきたが、そこにDV親父がやってきて……

 というシーンがあったけど、先が見えすぎてテレビ消したレベル。

 それ書くぐらいだったら血飛沫書こうか(ryってなる。

 私にとって、ヘタなグロシーンよりよほどグロシーンですそういうシーンは。

 この苦手っぷりに関しては次のエッセイのネタにでもしようかなぁ。

 



 ……そんなことを考えながら、自分の書いたものを改めて見直してみると。

 確かに、上記のようなドクズキャラが全くいないわけではない。

 こいつは×していい奴だ、というキャラも確かにいる。

 しかし思い返してみると、そういうキャラって



 現実で出会ったリアルなクズだったりする。



 事実は小説よりも何とやらというけれど、頭の中で考えるクズよりも、現実の人間の方がよほどクズだということもある。

(そういえばあのキャラを書いた時は、キャラの背景を書くよりも自分の中の憤怒と憎悪が勝っていたなぁ……)


 ひょっとして、他の書き手の皆様が書かれているドクズキャラって、現実にいたクズがモデルだったりすることも多いんだろうか。

「ざまぁ」系の話の冒頭、主人公へのいじめ描写やクズのクズ描写がやたらリアルで妙に生々しいことが多い(気がする)のってそういう理由なのか。



 いや、分かってるんです。

 そこまで懸命に、100%混じりっけなしのクズキャラを目指さなくても、面白いざまぁ系はいくらでもあるということは。

 ただ、読み手を一気に引き込むには、本当にどうしようもないクズキャラに主人公が辱められる必要がある。それは『シンデレラ』からの鉄則とも言える。

 ざまぁ系に限らず、様々な物語を良くも悪くも動かしてくれるのがこれらのクズキャラたちでもある。

 そういうキャラはどうやったら書けるのか。そんな徹底したクズを書くには……

 未だに悩んでおります。


 万人から嫌われかねない正真正銘のクズキャラを書けた時、書き手としてレベルがほんの少し上がりそうな気もする。

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