第36話 新しい世界へ…

メキライに連れられて、エレシアとプルピィは医療室へと足を運んだ。


医療室には一命を取り留めたギンとハルフーンがベッドで寝ていた。

ただ、一命は取り留めたものの二人が起きることはなく、ずっと昏睡状態のままだそうだ。



「リフリア女王に手当てをしてもらって二人は一命を取り留めたんだが…」


ギンのシャツを上げてみるとそこには未だ反転魔法で再生阻害をされている傷口が残っていた



「リフリア女王でも反転魔法の無力化はできないそうだ。」




「何か打つ手はないの…?」

プルピィが悲しみながらメキライに聞く


「一応あるんだが…魔法はほぼ全てに解除方法がある。ただ解除するためにはその魔法に精通している者じゃなければ到底厳しいだろう。」



「…メキがあの時アヌビス達の魔法を消した時に使った魔法は?それならどうにかなるんじゃないの?」


エレシアがふと気づいてメキライに聞くが、メキライは首を振った。



消化却然インパレイトは効果として『対象物を消す』というなんとも扱いにくい効果なんだ。今のギンに使えばギン自体が消失する可能性だってあり得る。」


プルピィは消化却然インパレイトと聞いた途端にピクリと反応し、青ざめる



「ねぇキマイラ様…その魔法って…」


「あぁ。禁忌魔法だよ。」


禁忌魔法とは『世界が一律して決めた絶対に使ってはいけない魔法』の総称であり、もし使えたとしても使ったら一発アウトな魔法



「じゃあメキは…犯罪者なの?」


「どうかな…あの時アヌビス達が使っていたのも禁忌魔法だ。対抗できる魔法は禁忌魔法しかない。攻撃を防ぐ為にやむを得ず使った、となれば防衛魔法として使用されてるからセーフだと思うんだが…」


メキライは話しながらもなんとなく重い空気を作っていることを感じ取って少しでも可能性のある話を持ち出す


「それに、反転魔法は基本的に特殊な構造で作られていることが多い。もし禁忌魔法を使ったとしてもちゃんと無力化できるかどうか…保証はないな。」



メキライがアヌビスにトドメを刺した時、アヌビス達がとある名前を喋っているのをメキライは聞き逃さなかった。


(やっぱりアヌビス達を動かしていたのはツタンカーメンか…もしこれで一時的にツタンカーメンが復活しているのなら、下手したら世界が滅ぶぞ…)



生きる悪魔、そう名付けられたツタンカーメンがもし今目覚めてしまったのならこの世界は奴一人で壊滅させることも可能だろう

それほどまでに力の強い敵が裏で手を引いていたことにメキライは安心することができなかった






「エレシア、少し話がしたいんだが…いいか?」


そう言ってメキライはエレシアを背中に乗せるように傾ける。


「…わかった。私も色々聞きたいことある。」


そう言ってエレシアはメキライの背中に乗った。

そしてプルピィの方を向いて話始める


「プルピィ、少しだけメキと話してきてもいいかな。後でプルピィともたくさん話すから。」


そのいつでもみんなを気遣ってくれるエレシアにプルピィは「わかったわ。いっぱい話すこともあるだろうし、たくさんキマイラ様と話してきてね。もちろん話が終わったら私とも話すのよ?」

と優しくエレシアを見送った。



メキライはエレシアを背中に乗せたまま、医療室を飛び出していった。
















大樹のてっぺんに近い木の枝に、エレシアと蛇の姿をしたメキライは二人で座りながら都市を眺める


「…エレシア、ありがとう。あの時アヌビス二体と戦ってくれなければ僕はギンも国王も助ける事が出来なかっただろう…」


真剣に感謝するメキライにエレシアは「やめてよ!」といきなりの感謝に照れながらも言う



「感謝するのは私の方だよ。あの時…アヌビスが魔法を使った時、私もうダメだって思ってた。多分あの時メキが助けてくれなかったら私は死んでたわ。それにギンや国王もメキがいなかったら助からなかったし…感謝をするのはこっちだよ。」



優しい風に煽られながら、二人は綺麗な都市を眺める






「エレシアはこれからどうするんだ?」


「どうって……」


ギンとまた…と言おうとしたがギンは未だ昏睡状態のまま、正直なところ未だにギンがアヌビスにやられたのは夢なんじゃないか…と思ってしまう時もある



「私は…ギンの禁忌魔法を解除するために解除してくれる人を探すよ。隣の都市に行ったりして…なんとしてでもギンとハルフーン王を助けたい。」



その言葉にメキライも優しく微笑む


「それなら僕も同行するよ。同じ語り継がれる存在…身を隠してきた同士だし、ギンのことも……」


ツタンカーメンのことも気になる

そう言おうとしたが、何も知らないエレシアまでも巻き込むのは良くないと判断して心の中に留めた。






「しばらくエルフの森で休んで、準備が整ったら他の都市に行こう。僕もギンには一刻も早く助かってほしいし、今の状態で待っていても何も変わらないからね。」


「そうだね……」



メキライとエレシアは、大きな都市ルベリハルコンを見て、そう呟いたのだった。






















アヌビスとの戦いから数日が経ち、エレシアもメキライも体力は十分に回復し、エルフの森を後にすることにした。


リフリアも森のギリギリまで見送ってくれた。


「それではリフリア女王、ギンと国王様を頼みます。僕たちも早く反転魔法を無力化できる者を探して来ますので、それまでお願いします。」


「わかりました。私たちも精一杯ギンさんとハルフーン国王を手当てしますので、キマイラ様、エレシア様、頑張ってください。」



リフリアの後ろからエレシア向けてプルピィが突っ込んでくる


「プルピィ!」

「やだよぉ!もうお別れなんて…」


別れが寂しくて泣いているプルピィにエレシアは優しく頭を撫でる



「大丈夫。ギンとハルフーンの傷を治すために頑張って反転魔法を解除してくれる人を探すから、プルピィも頑張ってね。」



涙をボロボロ流しながらも、プルピィは「頑張ってね…」と優しく見送ってくれた。




「それじゃあみんな!ありがとう!」


エレシアはエルフの森のみんなに手を振って、メキライと二人で新しい都市へと旅のコマを進めた。

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dragon's history〜ドラゴンズ・ヒストリー〜 赤坂 蓮 @akasakaren

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