第35話 最終決戦 (4)

別空間選択を駆使して素早く国王の別荘へと帰ってきたメキライはプルピィの魔法陣を使ってエルフの森へと瞬時に転移する



「すまない、少し遅くなった!」


キマイラの転移が完了したことを見届けたプルピィとドラードは安心しきってその場で倒れ込んでしまった



「シルフとドリヤード、大丈夫か!?」


プルピィは気を失い、ドラードも息切れしている状態、おそらくマナの使いすぎだろう


「今すぐに助けれないのが申し訳ないが俺は医療室まで国王を運んでくる。そこで救助隊も向かわせるから少し待っててくれ!」



メキライは国王の命優先で医療室まで走っていった。






医療室に運んで行くと、そこにはマナの力で生命活動が活性化されているギンがいた


「今戻った!魔法陣を作ってくれたシルフとドリヤードがマナを使い果たして倒れている。誰か救助に行ってくれ!」


メキライはエルフ達にプルピィを任せて、リフリアの方へと向かう



「国王様を連れてきてくれたのですね。さぁこちらに」


リフリアはメキライが来るとすぐにベッドを用意した。


ハルフーンをゆっくりとベッドに下ろすが明らかにギンの時とは違い、生きているように見えなかった



「すまない…僕がもう少し冷静な判断を下せていたら…」


「過去を責めても仕方ありません。今は出来る限りのことをするだけです。」


リフリアはハルフーンの治療に取り掛かった。

本当はギンとハルフーンの無事を確認したいのだが、エレシアが一人で戦っていることを考えれば次に取らなければいけない行動は一つしかなかった。



「リフリア女王、ギンとハルフーンを頼みます。僕はアヌビス二体と戦うエレシアの加勢をしに行くので。」


その言葉を聞いてリフリアはメキライを見る


「エレシアが今、アヌビスと!?」


「ええ。エレシアに魔法と格闘術を教えたのはあなただと聞いたので僕はここにギンと国王様を託したんです。リフリア女王の教えたことはちゃんと生かされてるんです。」



その言葉を聞いてリフリアは安堵する


「エレシア様も頑張ってるのね。私も、最後の力を振り絞って全力で二人を助けるわ。だから…キマイラ様もご無事で。」



メキライはリフリアに会釈して現世界を後にした。



フラットな世界をただひたすらに走る



(間に合ってくれよ…エレシア!!)
















エレシアは体力の消耗でハイブリッド型が上手に使えずにいた。


(まだいけるはず…まだ、まだいけるよ!)



ボロボロになりながらもエレシアは立ち上がり、そして構えた。



アヌビスは…攻撃を与えてダメージを負っているはずなのに、全然スピードもパワーも落ちていない。

化け物と戦っているみたいだ。



「しぶといなぁドラゴンのガキのくせに…覚えたての魔法で何ができる?どうしたら私達に勝てると思うんだ?」



二体のアヌビスはジリジリと詰め寄りながらエレシアを煽る



エレシアはプルピィからもらったブレスレットを使って自身に魔法をかける


「リペム」



自身の治癒能力を促進させ、回復を急ぐ




「だから…無駄なんだよその努力。何をやっても私達が勝つので。」




アヌビスは槍の石突き部分を地面に一回叩きつけ、大きな紫色の魔法陣を展開する



「そろそろ終わらせましょう。くだらないお遊びはもう終わりです。」



アヌビスは槍の先端をお互いに合わせて呪文を唱える



「ムナハラナブ・ユクルソーシアータ・テゴルダ・メルンチネンケブレバ」



呪文を唱えるごとにアヌビスの頭上に大きな悪の玉が形成される



「呪いの王よ、我が忠誠を誓うものよ、全ての苦しみをここに募らせ、そして永遠の苦しみを集めたまえ!」



風もなかった空間に吸い込まれるような風が発生し、光を吸収して世界が点滅する



「生捕りが一番良かったが…この魔法を受ければ魂もろとも塵になるだろうな。」




(あんなに禍々しいオーラ…巨大な魔法…私には無理だ!)


エレシアは立ち上がって逃げようとするがこんな時に足がすくんだ立ち上がれない。





「さぁ!永遠の苦しみを味わうがいい!」


アヌビスはエレシアに向けて禁忌魔法を放った



(もう終わりだ…ごめんギン、お母さん、やっぱり私…立派にならないや)



一滴の涙を流してエレシアは目を閉じる。






これで終わるんだ、私の人生








「まだ負けてない!エレシア、諦めるな!」


エレシアの前に現れたメキライはすでに完成された魔法陣を作り終えた状態で別空間選択で戻ってくる



消化却然インパレイト!」




瞬間——

アヌビスが放った禁忌魔法は一瞬にして消え去った



「な、何をした!」


メキライはエレシアに回復魔法を使って冷静にアヌビスからの質問に答える



「相手の魔法を打ち消す魔法だよ。」


エレシアも体力が回復し、再びハイブリッド型になって戦闘態勢になる



「小癪な…こうなったら二人まとめて潰すだけだ!」




二体同時に襲いかかるアヌビスに、メキライが魔法を唱える



「大いなる天の力よ、静寂な響きと絶え間鳴る鼓動を高鳴らせ、今天命に次ぐ——」




「これは…」

エレシアが思い出す

このフレーズは……神聖魔法と呼ばれる制裁を加えるための魔法だ。


それをメキライが今、使っている



「天地を貫く一万剣グラディアスサハラザーラ



天から一万もの聖剣が二体のアヌビス目掛けて降り注ぐ



「うぐぅぁぁぁぁぁあ!ツタン…カーメンさ……ま…………」



降り注ぐ聖剣は二体のアヌビスを貫き、アヌビスは跡形もなく消失した。






「終わった…んだよね……」


ボロボロになったエレシアがハイブリッド型を解除してメキライに聞く


「ああ。一応な。」


それを聞いて安心したエレシアは嬉しさのあまり気絶してしまった。


「おいおい!早くこの世界から出ないと、一生出られないぞ!?」



メキライは気絶したエレシアを背中に乗せて、別空間選択で現実世界へと帰った。



「ありがとう。エレシアのおかげで、みんなを助けることができたよ。」


メキライはつぶやくように、エレシアに感謝の気持ちを伝えた。














見覚えのある部屋でエレシアは目を覚ます

エルフの森の療養室だ。



「なんでここに!?アヌビスは!?」


エレシアがあたりを見渡すとプルピィが隣で寝ていた



「プルピィ?」

「…ん?


エレシアの声にプルピィが起きる


「あれ…ここ、私魔法陣を維持するのに精一杯で…あれ?エレシア?」



二人して記憶が曖昧になっているところに獅子の姿のメキライが様子を見にくる



「目が覚めたのか二人とも。無事までよかった。」


エレシアはメキライを見て「メキー!生きててよかった!」と喜びを叫びながらガッと飛びつくがプルピィはあまりピンときていない


「あぁすまない。プルピィ…だっけ。プルピィにはこの姿しか見せていなかったからね。」



メキライは姿を変えてキマイラの姿をに変身する


それを見てプルピィも「あぁ!あの時のキマイラ様!?」と驚きの声を上げた。



「君たちには感謝しても仕切れないよ。ありがとう。」


メキライは礼儀正しく感謝の気持ちを伝えるが、エレシアとプルピィは「やめてよそんなこと!」と頑なに感謝を認めなかった。



「お礼をするのはこっちの方だよ。正直あそこでメキがきてなかったらきっと私は今頃アヌビスに殺されてたと思う。だから私がありがとうって言う立場だよ。」


「私だって、キマイラ様がギンとハルフーン様を連れてきてくれなければ命はなかったし…本当に感謝してる。ありがとう。」



二人に感謝を言われメキライは少し照れるが、すぐに冷静な口調になって話す



「その…プルピィの言ってたギンとハルフーンの話…なんだけど……」



「何…?無事…じゃないの?」



「いや、言葉で伝えるのは難しい。とりあえずついてきてくれるか。」


エレシアとプルピィはギンとハルフーンの生死を聞く前にメキライに言われるがままについていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る