第50話 お誘い

『WINNER TIE』

 

「うっ、また負けた……」

 

 夏休みに入った。俺はこの日自宅で智依とゲームをしていた。

 

「陽太君よわーい」

「いや、お前が強すぎるんだよ」

「ふふん、陽太君もまだまだということだよ」

「さいですか……」

 

 ドヤ顔する智依に俺は苦笑する。

 

「……そんなことより先日の件」

「……なんのことすか?」

 

 途端に智依が不機嫌そうにする。いや、はい……十中八九あれですよね。

 

「川瀬とのお泊まりはどうだったんですか? 谷口陽太君?」

 

 ……おっと?

 

「まさか夕食だけでなく、お泊まりまでするなんて……一体どういうことなのか説明してもらえる?」

 

 んんんんんん!? どういうこと? なんでバレてんの?

 

「…………智依。落ち着け。お前は何か勘違いしてる」

「勘違いじゃないです。男女同じ部屋で寝たんですよね? 谷口陽太君」

 

 あかん。これ完全にバレてる。言い訳すればするほどダメなパターンや。だって智依の目が完全にゴミを見る目だもん。つーか敬語なの怖い。

 

「……えと……その……誰からその話を……?」

「川瀬から」

 

 おい、川瀬この野郎。

 

「なんか翌日妙に浮かれてたから揺すったら簡単に吐いたよ」

 

 うーんこの。

 

「えーとこれには事情があるんですよ」

「ふーん。続けて?」

 

 視線が痛い。辛すぎる。そんなことを思いつつも説明を試みる。

 

「いや、雨降ってたじゃん?」

「うん」

「そんな中帰すと風邪ひいちゃうかも……じゃん?」

「うん」

「だから……泊まってもらったというか」

「……なんか、チャラいナンパ男みたいなことやってたんだね……」

「…………」

「…………」

「……なんか言って!?」

 

 居た堪れないから!

 

「まあ、別に怒ってるとかじゃないから」

「え、そうなの?」

「うん、だって怒る理由ないし。別に彼女でもないし」


 そういう割には不機嫌そうな顔をしている。

 

「……」


 と言うより無言になった。

 

「……あの、智——」

「あのさ」

 

 話しかけようとしたら、逆に話しかけてきた。何なんだ一体……。

 

「今年の夏祭り……一緒に行かない?」




お待たせしましたー!1年振りの更新です。まじで遅くなりすみません…。

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小悪魔な彼女に仕返ししようと攻めてみたらデレた 兵藤文月 @hyoudou0307

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