七夕特別編ss それぞれの願い

七夕。毎年、7月7日に短冊に願い事を記し、それを竹に結ぶと願いが叶うと言われているイベント。……正直、願いが叶うなんて信じてる人はほとんどいないと思う。それでも、人々は毎年短冊に願いを託す。願いが叶うことが重要ではないのだ。自分の願いを言葉という形にすることが大事なのだ。願いが叶ったらいいな。そんな風に自らの願い事に思いを馳せる日。それが七夕。


「ふぅ……」


俺は短冊に願いを記す。


──川瀬にからかわれませんように



七夕。私にとって、七夕はただ願いを記す日ではない。その願いを形にし、決意をする日だ。いわく織姫と彦星は、互いに夢中になるあまり、引き離されたらしい。まあ、そりゃいくらお互いに相手に夢中だからって仕事サボってちゃダメだよね。その点、私は大丈夫だ。──だって、相手に夢中になってるのは私だけだ。でも、いずれ谷口を振り向かせる。それこそお互いに何も見えないくらい。ま、私は織姫と彦星じゃないから自分のすべきことを疎かになんてしない。恋も自分のすべきこともどちらもこなしてみせる。だから


──谷口と付き合えますように


これは決意だ。ただの願いで終わらせない。私の決意。願いを現実へと変えるための儀式。


「……きっと叶えてみせるんだから」


私はぎゅっと短冊を胸に抱え、一人彼に思いを馳せた。


七夕。私にとって昨年までは何でもない普通の日に過ぎなかった。けれど、今年はこうやって願い事を書きたくなったのは思い悩みがあるからだ。……どの口がとは思うけれど日本人は図々しいと思う。普段は神様なんて信じてないくせにこういう時には思いっきり頼りにするなんて都合がよすぎる。でも、まあ今回は私もその精神に習おう。この気持ちが何なのか、彼を、陽太君は私にとって何なのか知りたいから。ああダメだ。最近、ずっとこればかりだ。けれど、仕方ない。思わずにはいられないのだから。


──この気持ちがなんなのか、答えが出せますように






お久しぶりです。兵藤です。最近、私生活が忙しくて全く投稿できていませんでした!今回の話は昨年Twitterにて投稿したものを加筆修正したものになっています。ぜひお楽しみいただけたら。なお、本編の投稿はまだしばらくできそうにありませんが、気ままにお待ち頂けたらと思います

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