第3話 除霊か浄霊か

 昼休み、玄太は校長室にいた。

 もちろん、かすみ先生も一緒だ。そして、なぜか夏菜さんもいる。


「なぁ、なんで、夏菜さんがここにいるんだよ」

 玄太は、小声で姉に訊ねた。

「あぁ、あの子、霊感が強くてわかる子なのよ」

 ……えっ?

 驚く玄太を無視して、かすみ先生は校長先生と話を始めた。


 校長は、話を聞き終えると目を閉じて大きなため息をついた。それからいぶかしそうに玄太を見る。


「藤原君、本当にこの学校で最近続いている……その、なんだ……」

「はい、続いている四件の自殺は、四月に亡くなった男子生徒が原因だと思われます」


「まだ自殺が続くと?」

「禍々しい呪いが残ってるので、まだ終わっていません。一刻も早く除霊を――」

 すると、夏菜が玄太の言葉をさえぎった。


「私は、除霊することに反対です! 彼を除霊するのではなく、浄霊して救ってあげるべきです。生きている間ずっと苦しんで、死んでからも悪霊扱いされるなんて、そんなのはあんまりです!!」


「おいおい。人を呪って死んだ人間だぞ。もう、怨霊化している。浄霊は無理だ」


 夏菜は、そう言いきった玄太をキッと睨みつけた。

「やる前から無理だって決めつけないで!」


「まぁまぁ、夏菜さん。あなたは、真守君の魂を救済して欲しいのね?」

「はい」


「ところで、その、なんだ、除霊と浄霊って、どう違うんだ? 私には、さっぱり分からんのだが……」

 校長が、頭をポリポリかいて困惑している。


「除霊は、霊を祓ってしまうことですが、浄霊は、霊を説得してあの世へと送ってあげることです。真守という人物は、呪いをかけて亡くなっています。今やその魂は怨霊化しているので、説得は無理だと思います」


 玄太の言葉を、苦虫を嚙み潰したような顔で夏菜が聞いていた。


 その顔を見たかすみ先生は、右人差し指を眉間に当てて何かを考えている。

「真守君がどんな呪いを使ったのか、夏菜さんはわかっているの?」

「いえ、はっきりとは……」


「じゃ、それを調べてからね。それから、除霊か浄霊か決めましょう。この話は、ここで一旦終了。校長先生、それで宜しいですか?」


 校長は、どこか精気の抜けた声で「とにかく、君に任せる」そう言うと、冷めたお茶をすすった。


「ありがとうございます! さぁ、二人とも今から屋上に行きますよ」

「えっ? 今から? もうすぐ授業が……」

「玄太さん。あなたは、ここの事件を解決に来たの。ゆっくり授業を受けている場合じゃないのよ」


 あり得ない……

 これが、教師の言葉か?

 そして、校長先生も何も言わない。

 今、俺から目を逸らし空を見上げた……

 

「さっ、二人共急いで」


 こうして三人は、立ち入り禁止となっている屋上へと向かった。 

 


 






 

 

 



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