20話:終わりはいつも突然に
最初に仕掛けたのはルジャウッドだった。2本の触手をシーヴァに伸ばす。それは彼女を絡めとる様な動きをしているものの、ルジャウッドの頭部の眼は捕食者のそれであり、殺意に溢れていた。シーヴァは反射的にタクティカルバトンで流そうとしたが、触手により絡み取られることを警戒し、咄嗟に左側へ飛んだ。
反撃を誘発したが、それが外れ焦りを覚えたルジャウッドは全方位に棘を射出しようと、身体の形状を変化させた。しかしそうはさせまいと、シーヴァのタクティカルバトンが差し込まれ、うまく球体になることが出来ない。短気なルジャウッドは再度、人型の形態に戻ると黄色い眼球でシーヴァを捕えようとした。
しかしそれは音もなく振り落とされた大剣によって叩き潰された。一瞬何が起きたのか分からずルジャウッドは硬直する。そして触手に備わった原初的な嗅覚を使い、今や自分が絶命の危機に瀕していることを理解した。殺気を放ちながらミカルナが近づいてくる。そしてまたしても音もなく大剣が振り落とされた。
悪魔を駆逐したミカルナとシーヴァはそのまま家に火を放つと、その場を後にした。悪魔も魔女も火あぶりになれば良い。神に仕える者たちは皆、そう教えられる。特にスコラ学派の学校の出てあるミカルナとシーヴァは、その思想に何の違和感も抱かず行動に移していた。
木造建築であったこともあり、オスタルの購入した家はすごい勢いで燃えていき、ルジャウッドは焼かれ炭化していく身体でのたうち回る他なかった。
*
「爆発があったけど大丈夫だったか?」
オスタルとリナーシャ、ミカルナとシーヴァが合流した後、リナーシャが開口一番に爆発の件を尋ねた。それにはミカルナが火あぶりにしただけですと答え、その場の全員が納得した。それからルシャールの乙女たちはラプームとヴィブルが出て行った方向とは別の方向から、アルク=エプの街を後にした。
やはり彼女たちも故郷でもないこの街に心残りは無い様で、夜が明ける前にアルク=エプの街を離れていった。そして誰が提案したわけでもなく、4人は自然と行き先を決め、別れていった。必要であればまた出会うことになるだろう。
彼女たちが知ることはないだろうが、いずれまた聖なる神にとって悪しきものがこの街を支配することになる。
それは今回のような裏から牛耳る様なやり方ではなく、堂々と力を示し恐怖でアルク=エプの街を支配する。たった一人の妖術師の手によって。しかしそれはまた別の話。
ー完ー
ルシャールの乙女 城島まひる @ubb1756
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