第3話:カムルの村


「着いたぞ。ようこそ、カムルの村へ。」

歩くこと数十分。シーナに案内された三人は村へとやってきていた。道中で数回獣―魔物というらしい―に出くわしたが、全てシーナがあっさり倒してしまったのであまり実感はなかった。


「兎に角、ひとまず長老に会ってほしい。私も同席するからな。」


そうして、三人はこれまでの経緯を長老に話した。

しかし特に驚いた様子をされなかったが。


「なるほど…そのようなことがあるとは不思議ですな。しかし我々は500年も時が経っているようには感じんのです。」


「えっ?」


「皆さんの話が正しいとするなら、なにかきっかけがあって時が動き出したと考えるべきかと。」


「…そんな事が。」


その言葉にエリオスは続ける。

「多分、この島が封印されているのには何が理由があると思うんです。それも、500年も解けなかった重要な秘密が。」

「ふむ…そうですな。一つ可能性があるとすれば、この村の南にある洞窟ですかな。あそこは島民にとって禁足地になっております。それ故、いままで誰も足を踏み入れたことがないのです。」


「なら、俺たちがそこを探索してくるっていうのは。」


「確かにその手もあります。しかし失礼ながら今のみなさんのお力ではあの場所を調べるのは少し厳しいかと思います。突然のことで疲れておるだろうし暫くこの村に滞在して皆から戦闘のコツを掴むのがよろしいかと。」

「じゃあそうさせてもらいます。ほら二人とも、行くよ!」


ナリアはそう言うと、二人を引き連れて出て行ってしまった。


「シーナ、お前も手伝ってやりなさい。どの道あの場所は調べねばならんと思っていた所なのだ。いつまでも古い掟を守り続けていては発展できん。」

「………わかりました。彼らの疲れが取れ次第、相手をしようと思います。」


その日は宿に案内され、眠ることにした三人だったが…


「ねえ、エリオス。起きてる?」

「うん。」

「私さ、あの神殿に入った時になんだか違和感を感じたんだ。それが何なのかは分からないけど…今こうして知らない場所に迷い込んで、お母さん達にも迷惑かけてると思うと、不吉な予感だったのかなって思うの。」


「例えそうだとしても、僕は後悔してないよ。」


「えっ?」

「結界の中にいる人たちに会えて、今まで御伽噺のように感じていた世界が本当に存在するんだって分かったから。勿論家に帰れるのか不安ではあるけどね。でも、もしあの番人の言うように僕達が選ばれた存在なら、案外帰れるのかもしれないと思うんだ。

「…そっか。じゃあ私も二人の足手まといにならなきように鍛えてみようかな。こんな道もわからない所で死ぬなんてごめんだし。」


それだけ言うと、ナリアは眠ってしまった。エリオスはふと空を見上げる。そこには故郷で見たものと同じ星座が見えた。なんだか、少し安心できたような気がした。







次の日。三人はシーナと共に村の外に来ていた。


「お前たち、魔法は使えるか?」

「ま、魔法?『アーツ』なら学院で習ったけど…」

「それって、伝説とかに出てくるやつですか?」


「伝説…なのか?この辺りでは割と普通に使える者たちもいるんだがな。500年も差があると伝説になるものなのか…?

まあいい。魔法は才能がものをいう部分が大きいが、それでも『魔力』を感じることなら誰でもできるはすだ。」

「魔力…」

「そうだ。胸の辺りに手を置いて意識を集中させろ。

そして、この力は自信を持つ事が最も重要なんだ。

自分には魔力がある。ちゃんと使える。そう信じないとできんからな。」


言われた通りに意識を集中させると、胸の辺りからなんだか温かい力が込み上げてくるような気がした。


「な、なんだこれ!?」

「すごい…不思議な感覚ね。」

「なんだかあったかいような。これが魔力?」


「よし。その様子だと全員感じ取れたようだな。ならまずは回復魔法を試してみるか。どの種類の魔法が使えるかは素質によるが…これが使えるのと使えんのでは生存率が大きく異なる。それだけ重要な魔法だ。」

「どうやればいいんだ?」


「やって見せるから見ていろ。…『メディナ』」


それに倣って試してみると、使えたのはエリオスとナリアだけだった。ではアゼルはと言うと…


「俺のは…なんだこれ!?」

そう言うアゼルの目の前には透明の壁ができていた。 


「それは防護魔法だな。どうやらアゼル君はそちらの方が適正か高いらしい。まあ、最も私も基礎的なものしか使えんので偉そうなことはいえないんだがな。」


一通り使い方を説明したシーナは次の説明に移る。


「よし。では次は攻撃魔法だ。これは戦闘経験により進化していくものだから今の君達が使えなくても落胆することはない。」


これも同じくやってみると、使えたのはナリアだけだった。指先から小さな氷の刃が飛んでいく。


「成る程…よし、ナリア。君はこの指輪を付けてみろ。」

「これ、何なんですか?」

「攻撃魔法の威力を増幅させるための魔法が僅かに掛けられている。昔は杖なんかを媒介にしていたらしいが、この形のもののほうが便利だからな。勿論増幅率は杖の方が高いのだが、それでは咄嗟の攻撃を防ぎきれん。」


それを付けてみると、今まで不規則に飛んでいた氷がしっかりと直線状に飛ぶようになった。


「すごい…」

「まだまだ世界にはこれよりも強大な魔力を持った武器がたくさんあると聞く。こんなもの比にならんほどにな。それから、エリオスとアゼル。君達はどちらかと言うとアーツの方が得意なようだ。武器を融通してもらえるか聞いてみるから、少し待っていろ。」


残された三人は、少し疲れていた。


「まさか、こんな力があるなんてね。」

「…向こうじゃ使用厳禁よ。こんなのがあると知れたらどうなるかわかったもんじゃないんだから。」

「おう、そうするさ…にしても疲れるもんだなこりゃ。」


エリオス、ナリア、アゼルの順にそう感想を述べた後、少し話し合うことにする。これもまた、一つの新たな世界が開けた瞬間だった。

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星を巡る旅 @hamumikya

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