第15話 目覚め。
「ん…っ…」
目を開くと、見慣れた景色が広がっていた。
青い壁紙。
濃い茶色の机と椅子。
季節の服が数着しか入らない小さなクローゼット。
整理されていない本棚。
そこに並んだお気に入りの漫画。
そして、ごつごつした大きな手。
目覚めたのは、祐一の方だった。
祐一は、慌てて階段を駆け下り、洗面台に急いだ。
その鏡に映しだされたのは、何の変哲もない自分の背中だった。
もちろん、羽根など生えていない。
「母さん!今日、何月何日!?」
「は?何言ってんの!四月六日、高校の入学式でしょ!早く着替えなさい!」
と言って、頭を軽く叩いた。
それでも信じられない祐一は、花弥と初めて会った、高校へ行く、途中の桜の木の下へと急いだ。
着くと、風が桜の花びらをなびかせていた。
しかし…、そこに花弥の姿はなかった。
「花弥ちゃん…僕の身代わりで死んじゃったの?」
祐一のポッカリと開いた心に、強い風が吹き、ひら…っと何かが舞い降りて来た。
手を伸ばすと、一本、白い羽根が祐一の手に吸い付いてきた。
「花弥ちゃん…天国に逝けたよね?」
一言呟くと、祐一は静かに歩き出した―…。
白い羽根と黒い羽根、すべてを君に…。 涼 @m-amiya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます