最終話 にんげんだもの
ディヤウスに成りすまし、このカドゥ・クワーズの一切を取り仕切っていたヤルダバオート亡きあとの世を管理することになったのは、ロランではなかった。
今や創世神グナーシスの唯一の忘れ形見となったガリウスと≪魔星≫たちがそれぞれ役割を決め、この世界を協力して治めていこうという話になったのだ。
ヤルダバオート軍に囚われの身となっていたガリウスはジョルジョーネたちによって救出されたらしく、その理由は≪ギルティ・オブ・ブライブリー≫という自分たちの力を大きく底上げしてくれるそのスキルを惜しんだからであったようだ。
ロラン率いる≪魔星≫とガリウスの仲立ちをしたのは、そのジョルジョーネであった。
腹心エマニュエルを失い、途方に暮れていたガリウスはジョルジョーネにすっかり頼り切るようになってしまい、参謀として傍らに置くことを強く望んだ。
≪ギルティ・オブ・ブライブリー≫により神の域に到達できた者もそうでない者も、≪魔星≫から≪
そしてガリウスは魔族の世界を、≪
ロランはどうなったのかというと……売れない小説家になっていた。
これまでの
作品の評価は芳しくなく、人気を得ることはできなかった。
ファンタジー、ミステリ、SF小説 、恋愛小説、純文学、性愛小説……。
ジャンルは多岐にわたるも、どれも鳴かず飛ばず。
潤沢にあるポケットマネーで自費出版を続けるも、その作品たちが世の人の心をとらえることは決してなかった。
一番部数が伸びたファンタジー小説「俺の右手が左手になった時」が八十一冊売れたのが最高記録で、
ちなみにロマリウスはエゼルキアで出版社を立ち上げ、今は社長業をしている。
俺にはやはり小説家としての才能など無かったと確信を深めたロランであったが、それでも執筆活動を止めることは無かった。
それが何故かと問われると、それはやはり小説を書くことが好きだったから。
もうすでに成り上がりを極めた俺にしてみれば、より優れた作品を世に生み出すことが今、一番の夢なのだ。
もちろん、
騎士ロラン・シュバールとしての生活や夜兎王国の国王としての務めも維持し、忙しい多重生活も継続中だ。
創作活動の合間にセックスをして、さらにその気分転換に気まぐれで人助けをする。
そんな今の暮らしにロランは心から満足していた。
ロランは、創世の夫婦神の力を用い、カドゥ・クワーズの惑星活動の維持のみを担当し、それ以外のことには口を出さなかった。
不慣れなこともあって、ガリウスと≪星神≫たちの治世には大小さまざまな問題が発生していたが、それも見てみぬふりをし、あくまでもこのカドゥ・クワーズに生きる一人の人間であることを貫いたのである。
困り顔で相談にやって来る≪星神≫たちに、いつもロランは言う。
「失敗したって良いじゃない。だってにんげんだもの」
謎スキル『カク・ヨム』で成り上がる。卑怯とか言わないで。 高村 樹 @lynx3novel
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