多くの人を救った、一人の勇気
訓練の記憶が薄れつつあった頃、学校の近くで規模の大きい自然災害が発生した。
子どもたちのほとんどが突然の事態に動揺した。泣いている子、友達と抱き合う子、机に隠れたが動けなくなった子……、恐怖にのまれて訓練のときのように行動できない子ばかりだった。
一方の先生方もパニック状態になっていた。作業の気分で訓練に取り組んでいたことで、正しい避難方法を忘れてしまっていたのだろう。
「どうすればいいんだ、子どもたちを守らなければならないのに……」
慌てふためいていたところに、あの男の子がやってきた。
「先生、訓練で学んだことを思い出してください!」
その一声で先生方は冷静さを取り戻した。その後、避難は成功し、ケガ人もでなかった。子どもたちは入学したばかりの男の子に「ありがとう」と言葉をかけた。
感謝の言葉をかけられた男の子はこう言った。
「先生、訓練をしてくれてありがとうございます」
先生方は自分たちの対応のまずさを恥じた。彼の方がずっと真剣に取り組んでいたじゃないか。
「ありがとう、〇〇君はみんなを助けてくれたヒーローだね」
先生からも感謝の言葉が。嬉しがるかと思いきや、
「じゃあ、僕はリーダーの赤になれたのかな?」
と不思議な質問をして、先生の顔を笑顔にさせた。
「そうだよ。〇〇君は小さなリーダーの赤になれたんだよ」
入学したばかりの英雄 荒川馳夫 @arakawa_haseo111
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