第4話 ずっと前から。
初めて人を殺したのは小学校二年生の時だった。
僕が小学校二年の時いじめを受けていた。ちょっとした意地悪のつもりだったのだろう。先生もじゃれあいぐらいにしか認識していなかったはずだ。海の近くの田舎の学校。人も少ない。いじめのに対してのポスターとかも見たことないような場所だ。
でも、当時の僕にはそれがつらかった。毎日泣いていたのを覚えている。
ある日の帰り道、泣いて帰っていると、一人の女の子に声をかけられた。
「末田君だよね?どうしたの。」
りさだ。この時はまだ苗字で呼ばれていた。
僕は人見知りではなせなかった。まして泣いているところを見られたのだ。恥ずかしかった。
「黙っててもわかんないよー。何かあったの?」
僕は少しずつ話し始めた。
この子なら助けてくれるかもと淡い期待があった。
帰り道、彼女はずっと親身に話してくれた。僕はずっと泣いていたと思う。
話がひと段落して、彼女はうんうんとうなずきながら僕にこういった。
「強くなってみたら?仮面ライダーみたいに、敵をバーンて倒せるくらい。いじめてくる奴ら全員ぶっ飛ばしちゃえ。」
今思い返すとすごく子供らしくて幼稚だ。でも、当時の僕には彼女がヒーローに見えた。
かっこよく敵を倒すふりをする彼女にあこがれ、恋をした。
次の日から僕はトレーニングをした。子供の考えたものだけど、僕は一生懸命だった。体は変わったわけではない。でも、自信がついた。時にはこぶしで解決したりしていた。いじめも少しずつ減ったように思う。
二年生に上がるころにはいじめられることもなくなった。彼女へのあこがれがさらに強くなっていたと思う。
二年生の夏休み。公園でトレーニングと称して雲梯をしていた。かなり暗くなっていた。そんなとき二人の少女が目に入った。
喧嘩だろうか。取っ組み合いになっていた。僕の中でヒーローという言葉が頭に浮かんだ。
「君たち、喧嘩はよくないぞ。」
走って行って腰に手を当ていった。
一人は半泣きになって陽ちゃんのばーかばーかと言ってはして逃げていった。もう一人は僕をにらみつける。
「誰?邪魔しないでよ。」
「僕は?僕はヒーローさ。」
僕は自慢げに言った。でも、次の一言が僕の中の化け物を呼び覚ましてしまった。
「ヒーローなんて馬鹿見たい。」
頭の中が真っ赤になった。思い出をけなされた気がした。
僕はつかみかかり、押し倒し、首に全体重を乗せた。
苦しそうにもがく表情。僕の手をかきむしる手。漏れるうめき声。そして、だんだんと抜けていく力。今でも鮮明に思いだす。
そうして動かなくなった死体を僕は見下ろしていた。不思議と罪悪感はなかった。
胸についていた名札をとり、名前を確認する。
「一年二組。入江陽。」
下半身に熱を感じた。
彼女にキスをする。
下半身が濡れていることなど、気にも留めなかった。
僕は死体を背負って海に行った。本当は入ってはいけない場所。ゴミも多くて波も強い。
名残惜しさを感じながら僕は彼女を海絵と投げ捨てた。
次はりさを殺そうと思った。しかし、りさは一年生ではない。とても残念だった。一年生でなくてはだめなのだ。気持ちよくない。
だから決めのだ。彼女と添い遂げ、幸せの全盛期に殺そうと。
それまではほかで我慢すると。
しかし、うまくはいかなかった。警察にばれてしまった。きっと彼女たちが見つかってしまったのだろう。
やらなくては。
最後に彼女を。
大切に、思いを言葉に乗せて。
りさを殺そう。
ずっと前から。愛していた 椎名さくら @katikuika
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