第67話 共闘 3

 ドリガナ迷宮、地下26階層。


 第10階層にあるショートカットの隠し階段を使って25階層へ降りて来たオレ達は、其処の階層BOSSであるオークキングを倒して一旦休息をとってる処。


 それにしても『地上の星』の5人パーティでの戦い振りを見て思う。

 タイミングの欠点、解消されてないよ。


 勇者マーズがトドメを刺す前だ。盾役プルートが食い止め、回復役聖女ビーナスが回復支援を、大賢者サターンが攻撃魔法で支援し、義賊マーキュリーが足止め的嫌がらせの攻撃をして、その間にマーズが剣技の溜めを作るんだけど。


 このタイミングが微妙にズレてる。

 マーズの独特な攻撃リズムは中々読めないのは分かるけど。前世ゲーム内では、コレ、オレジュピターの役目だった。風の魔法剣を使って『ヒョイン』って剣を鳴らすんだ。でオレ魔法剣士が突破口を開き、それに合わせて各位が動く。精霊魔法使いガイア支援バフや攻撃魔法が無いのも微妙に痛い。

 前衛の火力不足。

 此処程のランクの迷宮になると、流石に『地上の星』でも地味に響く。オレや『裁きの刄』の攻撃力があったとしても、だ。


 オレ自身、どうしても魔法攻撃の立ち位置になるし。魔法使いレベルカンストでテイマーになってる設定のオレは、前世マエの様に火力の高い魔法剣を駆使して前衛攻撃が出来なくなってて。いや、スキルは残ってる。が、現役魔法剣士の攻撃力ソレとは、やっぱ威力が違う。それにガイアの上乗せバフもあったし。


 カミーユ、連れて来た方が良かった?


「此処へはゲームでも来なかったからなぁ」

「ある意味、隠しクエストだったからなぁ」


 二大巨頭とも言えるマーズとブレードさんの呟き。

 そう。

 オレ達でさえ未踏の迷宮が、この『ドリガナ迷宮』なんだ。その意味では、ショートカットの存在を知っていたヒカリさん、ハヤトさんの案内はマジで助かるよ。彼等が領主モルド辺境伯に仕える騎士になってるって事がね。


「それにしても、半分の階層BOSSがランクBのオークキングとはね」

「1階層から、ランクCが出て来たしな。コレは元からじゃなくて」

「ですね。ランクCなんて本来なら10階層からの筈なんです」

 道案内のヒカリさんは、この迷宮に関する情報を辺境伯の持つ資料の熟読で得たって言ってた。その暗記力、マジ凄いよ。

「全体的にランクアップしてる訳だ。まさか銀獅子シルバーレオのランクまで上がって無いだろうな」


 ランクS Sの銀獅子なんて考えたくも無いよ。


「流石に、それは無かろう。銀獅子の上位なんて存在しとらんし」

 サターンが言うなら、そうなんだろう。


「じゃあ、ボチボチ行くか。さて、ロディさんはそろそろ従魔の準備をお願いするよ」


 影に潜ませていたフェンリルフェングリフォングランを呼んで。


 ガォオオーン!

 グルゥ、グルルルルル!


 さて、行こうか‼︎


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 噂の英雄級ランクAテイマー、ロディマスの魔法攻撃は、『滅びの魔女メーヴの息子』の名に恥じない威力がある。

 成る程。

 コレでランクA従魔もいるのだからワンマンアーミーとして破格だな。それに魔法剣での攻撃も、マーズに巧く合わせて来ている。

 だが、魔法剣士ジュピター程の火力が無い。尤もテイマーでこれだけの攻撃力を持つのだから、これ以上を望むのは贅沢過ぎると言うものか?

 それに体格もな。

 ジュピターは、どちらかというと剣士寄りの体格で大概の魔物にも力負けしなかったが、ロディマスはやはり子供だ。確か14歳と聞いた。

 現実日本人なら、そこまで小柄という程では無いのだが、この世界レムルでは明らかに小柄だ。魔法で火力を上げてはいるが、そもそもの体力パワーがなぁ。

 この26階層からは更にキツくなるだろう。

 そう思ってロディマスに従魔の活動を要請する。


 だよなぁ。

 今迄、コイツは単体で動いていた。いや、まぁ肩に妖精ピクシーは居たみたいだが。


 コイツの全体回復エブリ・ヒールは本当に助かる。ビーナスの魔力を温存出来るのは、ある意味保険が効くと言えるからな。それにしてもピクシーなのに高レベルだな、そう思っていたんだが、後で聞くところによると、進化してハイ・ピクシーになってるんだとか。つまり回復だけでなく、攻撃魔法も全体攻撃や単体極大攻撃出来る事になる。そうなると最早癒しの鑑賞用等という存在シロモノじゃなくなる訳だ。

 本当に厄介な従魔を持ってやがる。

 つくづく敵対する事にならずに良かったと思う。


 フェンリルもグリフォンも、息攻撃ブレスがあるから、ある程度の魔物はあっという間に殱滅出来る。中層だが、全く低ランクのゴブリンとかが出ない訳でもないし。コイツらは数頼みの厄介さがあるが、氷の息アイス・ブレス炎の息ファイア・ブレスで瞬殺殱滅。まぁ魔石とか討伐部位も確保出来なくなるのがネックと言えばネックなんだが。どっちにしろ、コイツらの部位なんて端金にしかならない。


「フェンリルやグリフォンって、こんなにも強かったかい?中々出会わないランクAだとは思っていたけどさぁ」

 後ろで、少し気を抜いた感じのマーキュリーが呟く。グリフォンの知覚が人間以上だから、罠の種類は判定出来なくとも、何かがある事は即分かる様なので。コイツが騒いでからマーキュリーが探知をかけても充分罠解除が間に合う。

 戦闘だけでなく、迷宮探索でも色々と役に立つ従魔達に助けられて、俺達は最深部へと進んで行く。


 ラスボスはランクSだ。

 気を引き締めて行かないとな。

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最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね? ノデミチ @ndmt

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