最終話 聖樹の村
あれから一ヶ月が過ぎた。
ジェファーズ様を経由して、俺の無実は国中に知らされることとなり、また、真犯人とその動機及び犯行の全容が明らかとなっていった。
おかげで、俺は王都に戻ってくることができた。
神父様やシスターの眠る墓へ報告に行ったり、今までお世話になった人たちへお礼を言って回った。グリニスさんの話では、みんな俺が犯人じゃないってずっと訴えて続けてくれていたらしい。
だから、俺が無事にこうして王都に戻ってきたことでみんなとても喜んでくれた。中には泣きだす人までいたくらいだった。
それから、俺はこれから聖樹のある村で暮らしていくことを告げる。
「君が王都からいなくなるとは……寂しくなるな」
「あの村なら知り合いがいるから、会いに行くよ」
「元気でな」
「ホームシックになったらいつでも帰って来いよ!」
みんなからはそう声をかけられ、いろいろと差し入れまでもらってしまった。最終的には両手で収まり切れないほどの量になったので、同行してくれたジェファーズ様が気を利かせて大きめの馬車を用意してくれることに。
「今度はローナやウィラたちを連れて来たいな」
王都でお世話になった人たちに挨拶を終えた俺は、ジェファーズ様やグリニスさんと一緒に村へと戻った。
「よかったね、ルディ」
「うん。本当に……なって言ったらいいか」
嬉しい感情はあるんだけど、なかなか言葉にして表現できなかった。
正直、まだどこか浮ついていて、地に足がついていないって感じだ。
聖樹のある湖。
こうして離れて見ると……未だに信じられないな。
「では、私はこれで失礼するよ」
「あっ、ありがとうございました、ジェファーズ様」
「気にする必要はない。それより……これからの君の活躍に期待させてもらう」
「頑張ります!」
聖樹にはまだまだ可能性が秘められている。
その聖樹の力を扱えるのは、生みの親(?)である俺だけ――というわけで、聖樹の管理者として領主のジェファーズ様から正式に認定されたのだ。
今後は月に一度、屋敷へ聖樹の力と可能性について報告していくことになっている。
ジェファーズ様を見送った後、グリニスさんと肩を並べて帰路を進む。
「それにしても、ちょっと見ない間に頼もしくなったわね、ルディ」
「そ、そうかな」
「前とは顔つきが全然違うわよ」
自覚はないんだけど……グリニスさんが言うならそうなのかな。
振り返ると、確かにいろんなことがあった。これまで、決まりきった行動しかしてこなかった俺にとって、人生を一変させる出来事の連続――そりゃあ、少しくらいは印象も変わるだろう。
と、その時、
「ルディ!」
「パパ~!」
村に近づくと、ローナやウィラ、さらにシャーニーが俺を見つけて駆け寄ってくる。
「ふふふ、大人気ね」
「まあ……ちょっと大変ではあるけど……」
これから精霊たちも増えるだろうし、どこまでやれるかは未知数だ。
――けど、俺は俺を慕ってくれるウィラやシャーニーたち、そしてローナをはじめとする村の人たちのため、これからも聖樹とともに生きて行こうと思う。
幸せな日々が待っていると信じて。
聖樹の村で幸せなスローライフを! ~処刑宣告された少年は辺境の地で村長になる~ 鈴木竜一 @ddd777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます