60話 第三勢力
そうしてハプニングだらけの報告会は幕を閉じ、週明けの月曜。
今日は姉さんが部活の会合で忙しいらしく、雪菜さんがお昼を一緒に食べないかと誘ってきたのだが、
「あの、そろそろいいですか? 照はいつもあたしと食べてるんで」
「だから今日くらい譲ってもらえないかとお願いしているのでしょう?」
「いや、白藤先輩は放課後いつも照と一緒にいるじゃないですか」
「でもあなたと違って二人きりというわけではないわ。しかも人気のない空き教室だなんて、ちょっとフェアじゃないと思うのだけれど?」
「フェアじゃないって……。自宅に連れ込んでる先輩には言われたくないです」
「……」
地獄である。
俺を挟んで左右から言葉の応酬を続ける二人に、俺が一人魂の抜けそうな顔になっていると、
「いや、そんな顔になりたいのはむしろ私の方なのだがね……。というか、何故ここに連れてきたのか……」
はあ……、と湖ちゃん先輩が呆れたように嘆息する。
そう、俺たちは今アニ研の部室にいるのである。
もちろん意図的に連れてきたわけではない。
ただ廊下でいきなりバトり始めたので、とりあえずちょっと人気のない方へと移動を続けていたところ、いつの間にやらここに辿り着いていたのである。
「まあそう言わんでください……。ほら、一応俺副会長らしいですし……」
「むむ、そう言われてしまうと私も弱いな……。しかしキミたちはもう少し仲良く出来んのかね? 仮にも同じ者を好きになった者同士だろう?」
「ええ、そうね。でも同時に好きな人を取り合うライバルでもあるわ。だから馴れ合いは不要なの」
「あたしも同意見です。その方がいざという時に後腐れがないと思いますし」
「やれやれ、そういうところは意見が合うというのに困ったものだ」
そう肩を竦める湖ちゃん先輩だったが、やがて彼女は「ふむ、ならば仕方あるまい」と思い立ったように言った。
「ちょっとこっちに来てくれるかい? 弟くん」
「え、あ、はい。分かりました」
湖ちゃん先輩に呼ばれた俺は、そのまま彼女の隣の席に腰を下ろす。
すると。
「はい、ゲットだぜ」
――ぎゅむっ。
「「「――っ!?」」」
唐突に俺の顔をその豊満な胸元に埋めさせたではないか。
途端に清涼感溢れるいい匂いが俺の鼻腔をくすぐり、その柔らかな感触に思わず思考力が奪われかける。
だが途中ではっと正気を取り戻し、俺は「ちょ、な、何してるんですか!?」と湖ちゃん先輩に問うた。
「いや、キミをゲットしているのだが?」
「そ、そういうことじゃなくて!? てか、何故この状況でそんな真似を!?」
「はっはっはっ、決まっているだろう? それは私が〝三番目の彼女候補〟として名乗りを上げたからだよ」
「……えっ?」
三番目の、彼女候補……っ!?
な、何言ってんのこの人!? と俺が眉をハの字にしていると、雪菜さんが余裕を見せつつもどこか憤ったように言った。
「それは笑えない冗談ね。確かにあなたには色々と恩義があるけれど、そういう冗談は正直いただけないわ」
「ほう? では冗談ではなかったらどうするんだい?」
「……なんですって?」
怪訝そうに顔を顰める雪菜さんに、湖ちゃん先輩はククッとどこぞのラスボスのような表情で言った。
「よもやこの私が本当に善意だけで彼に力を貸していたとでも思っているかい? よく思い出してもみたまえ。彼に相談を受けて以降、誰が一番彼とともにいたのかをね」
「まさかあなた……っ!?」
「そうだよ。全ては私の計画通りだったというわけさ。おかげでこのとおり、私たちは仲睦まじい間柄となった。ちなみに私は彼の前で肌を晒したこともある。どこでとは言わなくても分かるだろう?」
「「――っ!?」」
「い、いや、あれはむぎゅうっ!?」
俺の口を遮るかのように湖ちゃん先輩が再びおっぱいに顔を埋めさせてくる。
そして彼女は「というわけで、だ」と笑顔で言った。
「仲良くしようじゃないか、二人とも。でないとキミたちが勝手に争っている間に私が彼をいただいてしまうよ? 私はこれでもぐいぐい行くタイプだからね」
「「……っ」」
「……」
え、なんなのこの流れ……。
これから一体どうなってしまうの……、と俺は一人白目を剥きそうになっていたのだった。
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なぜか姉の女友達が俺にだけめっちゃぐいぐいくる!? くさもち @kusanoomochi
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