第3話 居場所ができたよ
「おっさん、ボクのパーティに入ってもらえませんか?」
「え?」
「今日だってすごい助かったし、今後もお願いしたいんです。」
俺が必要とされている。
そう考えると悪い気はしない。
考えてみれば、今まではこんなふうに感謝されることもなかったなあ。
それに、報酬も労働に見合ってたんだろうか。
考えたら色々腹が立ってきた。
今後この子たちと一緒にやっていくことで、ちゃんと生活できるのか。
収入的にはちょっと不安な気もするが、アルバイトのつもりでやってみるか。
「俺なんかで良ければ、是非。」
「おっさん!」
なんだか変な雰囲気。
照れる。
どうやら勇者たちは同じ学校の友達らしい。
そういうかんじかあ。
まあ学生ならそんなにガッツリ冒険できないよね。
とりあえずは毎週土日と、平日は夕方から集まって冒険するようになった。
勇者たちと一緒に冒険するようになってから気づいたんだが、クビになる前よりも稼げている。
正直言って驚いた。驚愕としか言いようがない。
というか、なんでこんなことになるのかわからなかった。
「木村さん、ちょっと聞きたいんだけど。」
「え?おっさんどうしたんですか?」
自分では考えてもわからないから、正直に勇者に打ち明けた。
勇者は会計能力も高い。勇者に聞いたほうが早いというくらいにしか考えてなかった。
しかし、勇者からの返事は予想してもいないものだった。
「え?そんなことありえないでしょ?」
どういうことかわからなかった。
どう説明したら良いかもわからない。
俺はダメなオッサンだよ…。
「おっさん、給与明細とかありますか?」
「ああそれなら。」
と、給与明細を勇者に見せる俺。
一応相談の時に必要かと思って持っていたのだ。
それを見た勇者は驚いていた。
「おっさんこれ、騙されてますね。」
「え?」
「こんなのありえないですよ!よくこれでやってましたね。うわーボク頭に来ちゃったよ。」
人のことで勝手に怒らないでほしいんだけど…。
なんて思ってたけど、もう仲間として思ってくれてるってことか。
そう考えると、なんだかうれしい気もする。
それにしても、俺は長い間ひどい環境にいたんだな。
あれが普通だと思っていた。
勇者に言わせれば、そんなのは「ブラック企業」みたいなものだってさ。
たしかに言えてる。
「これからはボクが、おっさんをしあわせにしますから!」
「なにそれ。プロポーズ?」
ちょっと茶化してしまう俺。
だって恥ずかしかったんだもん。
捨てる神あれば拾う神あり、ってやつだろうか。
俺にとっては、勇者たちとの出会いは幸運としか言いようがない。
そして、こんな俺を必要としてくれる。
本当に良い仲間に出会ったと思う。
これからはこの仲間のためにがんばろう。
「こんなオッサンで良かったらよろこんで。一緒にしあわせになろうね。」
半分冗談で俺は言ったのに、
なぜか勇者は赤面していた。
おいおいオッサンだぞ?良いのか?。
戦士のおっさんはクビになりました あたまかたい @gorira2020
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