第19話 ベーコンサンド
メアルさんからもらったベーコンサンドを子供は急いで頬張った。相当お腹が減っていたのか、それとも他の人に取られる前に食べようと急いだのかわからないが物凄いスピードで食べた。
「ロアたちは帰っていいよ。同じ症状か確認するだけだし。でもルフはついてこい!あ、あと俺の鱗返してー。」
どうやら今日の夕食はハヤシライスが出るみたいで俺も早くそれを食べたい。だが、なぜか俺もついていく羽目になった。ロアさんとリリアさんはメアルさんにエリュトロンの鱗を返すとすぐ基地に向かっていった。メアルさんが『俺の鱗返してー』と言っていたが、それに関しては誰も何も言わなかった。俺は心の中でエリュトロンのだろ!って思ったが口にしなかった。
「終わった!」
ベーコンサンドを食べると子供は元気よくそう言った。
「んじゃいくか。」
メアルさんはカッコつけながらココアシガレットを口にした。一本吸えよ、と言わんばかりにシガレットの箱を寄越すから俺も一本もらった。
「僕にも!」
「お前は子供だからダメ。」
子供が背伸びするためのお菓子を『お前は子供だからダメ』と言う大人は初めて見た。不服そうな表情を浮かべる子供に対し、メアルさんは、タバコを吸うようなそぶりでココアシガレットを舐めていた。
「そう言えば名前は?」
「シュー、おじさんは?」
「お兄さんな、俺はメアル。んでこっちがルフ」
「ふーん、サンドイッチまだある?」
「あるけどあげない。」
恐怖の表情は消え、すっかりメアルさんに懐いていた。
「ポケットにいくつベーコンサンド入れているんですか・・・。ってかどこにそんなに入るスペースがあるんですか?」
「軍から支給されてるコートだよ?魔法がかかってないと思う?ルフのローブだってそうだよ。」
そう言われポケットに手を入れると、中でのびのびと動かせた。
「これって・・・。」
「拡張魔法がかかってんの、空間を大きくする魔法ね。」
だから2つもベーコンサンドを取り出せたのか。
「ここ!」
シューが指を刺す先には他と変わらない大きさの建物がある。周りの家と変わらず窓や扉はない。中に入ると暗く何も見えない。
「もう時間も時間だからなー。ルフは基礎魔法使えるよね?明かり作って。」
メアルさんに言われるがまま光の球を作る。メアルさんの教え方が良かったのか球は小さいものの部屋一面を照らせるぐらいの光になった。部屋は6畳ぐらいで、2人、口と目が開いた状態で倒れている。
「パパ!ママ!起きて!!」
シューが揺するが、二人は全く反応しない。
そしてメアルさんがエリュトロンの鱗を近づけるとその鱗は白くなった。
「同じ症状だな。」
メアルさんがボソッと呟いた。
「とりあえず帰るか。基地でロアたちの考察聞いた方が進展ありそうだし。」
メアルさんがそう言うとシューがどこか不安そうな顔で俺たちを見た。
「メアルさん、シューは・・・?」
「ああ、お前もついてこい。飯ぐらい余ってるだろ。」
メアルさんがそう言うとシューはパペちゃんをギュッと抱きしめ嬉しそうにこっちに来た。
魔法世界再生記 如月 巧 @Kisaragi_Yayoi
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