No.13「女神」

「フフ、やはり私の目に狂いはなかったわね」



 そう呟きながら、テレビのような形をしたモニターを水色の着物を着た銀髪の女性は見つめていた。そのモニターには黒髪の青年が写っており、手は真っ赤な血で染まっている。


 さらにその目の前には、『巨大な熊』が頭部がない状態で倒れていた。


 この状況から見てわかるように、この青年が巨大な熊を殺したのである。特撮やドラマなどではなく、今現実に、今実際に起きている出来事なのだ。


 それを銀髪の女性は頬杖をつきながら、目の前のモニターを見つめていた。



「『女神様』、頼まれた物を持ってきましたよ……って、なにしてるんですか?」



 すると、女性の目の前に、白いワンピースを着た背中に羽を生やした少女が、ゆっくりと上空から降り立ったのだ。この少女の手には、分厚い書類のようなものが持たれている。


 女神と呼ばれた女性はモニターから視線を外し、少女の方へと顔を向けた。



「ご苦労様。見てのとおりよ。『』を見ていたの」


「あぁ、『彼』ですか。それにしても、いったいどうして彼が『』されたのでしょうか。本来なら……」


「……それは私のもわからないわ。だからこそ『キシー』、頼んでいたものを」



 そこで『キシー』と呼ばれた少女は、手に持っていた分厚い書類を女性へ渡す。


 分厚い書類を渡されると、女神はペラペラとその書類をめくっていった。それは正に、なにか調べ物を探しかの様に。



「あの、女神様。私は書類それを取ってくるように頼まれただけなのですが、その書類は何なんですか?」


「これ? これは彼、『ナギサ』様に関する書類よ」



 そう言って、めくっていた書類の手を止めた。


 何かを見つけたのだろうか。


 そのページを女神はじっと凝視していたのだ。



「どうかされました?」



 当然、キシーは書類を凝視していることに疑問を感じ、耳にかかっていた金色の髪をかき分けながら女神に問いただす。


 それに対し、女神はなにか考え込むような様子をしていた。


 そしておもむろに、モニターの近くに置いてあった『巻物』を取る。



「キシー、貴女の意見を聞きたいのだけど、この巻物を見てもらってもいいかしら」


「? それは構いませんが、その『巻物』は?」


「これは『生命の本』と呼ばれている巻物で、この世の全ての生命について書かれているの。生命を持つ生物の情報、その生物の一つ一つの生涯についても書かれているこの巻物は、『神の所有物ゴッド・アイテム』とも呼ばれている代物よ」


「へー、そんなすごい物があるんですね」


「ええ、女神一人一人に渡されるわ」



 女神はそのまま、手に持った巻物を広げた。


 だが、そこには何も書かれておらず、真っ白な空白になっていたのだ。



「女神様、何も書かれていないようなのですが?」


「……」



 キシーのその問いに女神は何も言わず、じっと巻物を見つめる。


 すると、女神は広げてあった巻物の上に、手を少し浮かせるような形で置いた。そのまま目を瞑り、念じるように巻物の上をゆっくりスライドしていく。


 それと同時に、空白だったところから文字がスラスラと浮かび上がってきた。


 最後まで手をスライドし終えると、巻物には字がぎっしりと埋め込まれている。



「これが、『神の所有物ゴッド・アイテム』……」



 そのようにキシーが呟くと、女神も同調するように頷いた。


「そう、この巻物に調べたい生物の名前を頭の中で思い浮かべるだけ。それでその生物の情報が巻物に書き換えられ、巻物全体に反映される。簡単な話でしょ」



「たしかに、便利そうですね。それで、これにはなんと?」


「それについては、貴女が見た方が早いと思うわ」



 そう言って、女神は先程の巻物をキシーの目の前へと差し出す。


 これにキシーは女神に言われるがまま、その巻物に書かれている文字を確認した。


 しかし、巻物に書かれている内容を読んでいくごとに、眉間へシワを寄せてしまう。頭の中は困惑と驚きでぐちゃぐちゃになっていくのだ。




「え、これって、どういう……?」



 そしてそこに書かれていた内容は、キシーにとって驚愕の内容であった。

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『最恐』と呼ばれてた傭兵が死んだ後の世界は地獄ではなく異世界でした 蒼月 美海 @ruby009008

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