ゴーストandピーポー

ヤマモトダイチ

第1話 佐々木彩芽

 佐々木彩芽(ささき あやめ)が死んだ。


 そんな突然すぎる出来事から1週間が経とうとしている。


 彩芽はクラスの人気者だった。先輩や後輩、老若男女を問わず誰とでもすぐに打ち解ける、いわばコミュ力のバケモノだった。


 そんな人気者が突然亡くなった。交通事故だった。先生からその知らせを聞いたときは俺を含めて全員がどん底に落とされた。中には大声で泣き出す奴もいた。


 彩芽と俺は幼なじみだ。家もすぐ近くで暇さえあればよく一緒に遊んでいた。でも彼女が小学4年生の時に彼女の両親は亡くなった。両親も交通事故だった。そこから彩芽は施設に移ってそこから全く会っていなかったがたまたま入学した高校が一緒でそこで再会。昔みたいに、、、とはいかないが放課後とかの時間で何人かと一緒に遊ぶことはあった。

 2年生になると同じクラスになり、話す機会もまた増えていった。2週間後には夏休みを控えていて彩芽は「夏休みだぁぁぁ!!みんなで楽しいことしようねぇ〜」と教室で浮かれていた。俺もそんな夏休みを過ごすんだろうとぼんやり思っていた。「あ!私そろそろ帰らないとだから!じゃあみんなー!!また明日ねー!」

 

 その日の帰り道、彩芽は事故にあったのだ。



 1週間経った今、クラスは相変わらず暗い雰囲気が続いている。彩芽がいたこのクラスは毎日本当に明るい空気で溢れていた。それが今や暗い雰囲気が漂っておりクラスの奴らはただ小さな箱の中で時間に身を任せている。そんな感覚だった。俺以外は。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴り、部活に所属していない俺は真っ直ぐ家に帰る。廊下を歩き階段を降りようとすると俺を呼ぶ声が聞こえた。


 「竜平ー!放課後カラオケ行かね??」


 他クラスの仲のいい奴だ。最近やけに他クラスの奴らがよく誘ってくれる。きっと元気出していこうぜ。と励まそうとしてくれてるのだろう。そんな優しい奴らに囲まれていて俺は幸せ者だと思う。


 「あー悪い。誘いは嬉しいけど今日はやることあるんだ。また今度頼むわ。」


 「あ、そっか!わかった!んじゃまた行こうな!」


 正直カラオケにはめちゃくちゃ行きたかった。でも今日はしょうがない。アイツとの約束があるのだから。



 「にいちゃん、おかえりー」


 先に帰ってた3つ下の弟に出迎えられる。


 「母さん今日残業だってよー、だから今日は僕が晩御飯作るね!にいちゃん何がいい?」


 「なんでもいいよ。お前が作るのはなんでも美味いから。」


 「それが1番困るんだよ。」


 何気ない会話をして俺は自分の部屋に向かう。2階の奥にある部屋が俺の部屋だ。扉を開き、部屋に入る。


 「ただいまー」


 「おー!竜平!!おかえりー!!約束忘れてなかったんだね!!」


 そう言って佐々木彩芽が笑顔で俺を出迎えてくれた。

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ゴーストandピーポー ヤマモトダイチ @yama_0515

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