魔術都市編1
学園を出て、もうすぐで2週間になる。
その間だが、悪い事に暇が無かった。何故なら、同じ馬車に同じクラスの鬱陶しい男がいるからだ。
来る時は、馬車に乗っていたのは護衛の騎士1人だけだったのだが、国境を越える際に、馬車を何台か置いていき、その時馬車の無い生徒は、空いている生徒の馬車に入るのだ。が、自分の場合は--本当に不運なことに--こいつが乗る事になった。
しかも、場所が狭い為か、騎士は別の場所に移っていった。
……こいつと2人きりでいると、自分の神経がおかしくなってしまうだろう。
こいつの話を--少しでも早く魔術都市に着いて欲しいと心の中で願いながら--頷いて聞いていた。
……声が出ない。こんな事は生まれて初めてだ。驚き過ぎて、空いた口が塞がらない。その光景は、自分の常識を逸脱していた。
「ぉぃ……おい! あれは一体なんなんだ!? すげぇ、すげぇよ!!」
こいつも驚き過ぎていて、言葉を上手く言い出せていない。
隣の馬車からも興奮しきった声が聞こえて来る。うるさいとは思うが、その気持ちは……良く分かる。
学園のある場所--商業国クレルの王都でもここまででは無かった。此処は異次元だ。それほどの場所だ。
まず、外壁が違う。
普通なら石で壁を作っており、高さは精々10メートル程だ。だが、此処では違う。
壁を覆っているのは石では無い何か。黒く光を反射しているそれは、高さは優に30メートルを超えている。それだけでは無く、所々に塔のようなものが建っているが、高さが50メートル近くもある。
中でも都市の中心部からは、高さ200メートルもある様なものも建っている。
……外壁の門が開く。当然、木製などではなく、それも黒く光る何か。
今更に気付いたが、驚くべき事に外壁の全てが--全てが"魔道具"。
魔道具……一般人でも魔法を使う事ができる道具。生物以外が使う魔法を"魔術"という。
魔道具は、それと同じ大きさの宝石と同じ価値を持つ。数は限られており、国家でも価値の高い貴重なもの。
そんなものが目の前にたくさんある。
常識では理解できなかった為、気づく事に遅れたのだ。
--信じられない。
門をくぐると、そこは別世界だった。
道が地面以外の--空中にまでつくられており、それが階層構造になっている。
全員がはしゃいでおり、大きな声を上げていた。馬車から身を乗り出している生徒までいた。
馬車が地下へ向かう。
留学にあたって、1番最初に挨拶するべき人物が地下にいる為だ。
--声を出せなかった。
何十人もいる中で、誰1人として。
今いる場所は地下100メートル程。
地上では様々な道が階層ごとにあったが、此処では1本道しかない。
しかし、周りの風景が全く違う。
神殿の様になっており、道の左右にはたくさんの像が置かれている。
人間の像が21体、動物の像が1000体以上。そして、仮面をつけた騎士像が5体。
本物と同じ大きさなのだろうが、おかしい事がある。
人間達の像は自分達とさほど変わらない。
だが、動物の像は明らかにおかしい。
2メートル程度のものなら信じられるが--50メートル以上のものまである。
特に、2体の天使と悪魔の像。
この2つは頭が天井に届いてしまっている。
暗いせいで詳しく見る事はできないが、この2体の像だけは他とは違った空気を纏っている様に見えた。
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修正します(新しく作品書きます)。
神の力と(修正前) 冥星 @choppy
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