フレーヴァング国の若き王子ヴィトセルクには、城を抜け出す悪い癖があった。そこで知り合った従者のアスート、美貌のハーフエルフのレヴァル。
三人の関係は、主従関係ともいえるし、仲間ともいえるのだが、彼らのあいだにあるものは、友情という爽やかなものではないし、愛情というような美しいものでもない。この、強い男たちを繋げる一種独特の絆が、なんとも格好いい。
物語は、ある事件を追ってヴィトセルクが仲間を伴い、無謀にも辺境に赴くところから始まる。そこに待ち構えていたのは、ヴィトセルクの強さも権力も恐れぬ美貌の男、ガランドード。
このガランドードには、退廃的ではあるが、超越的な力が感じられる。
イラつくヴィトセルクだが、やがて彼の愛するハーフエルフのレヴァルが消えてしまう。そして、明らかになる辺境の、何百年にも渡る禁忌の秘密。
物語世界全体の、アンティークで暗い雰囲気。退廃の世界の中で、赤々と燃える松明のように輝くヴィトセルクの若さ、無謀さ。
神のように恐ろしく、悪魔のように魅力的な敵。
キャラクターたちの魅力と、設定の面白さに、ページを繰る手が止まりませんでした。
そして、最後に描かれる敵側、ガランドードの物語。
まるで、あまたの異世界が浮かぶ宇宙に、ひときわ輝く薔薇のごとき星雲を見たような読後感でした。
傀儡の王の息子として将来を期待されない王子、ヴィトセルク。
彼はそれを受け入れ、貧民街に出ては同年代の子どもたちとつるんでいた。
ある時、人離れした美しさを持つ少年と出会って……
ひねくれ者の王子。辛辣な従者。寡黙な美少年。
彼らが向かうのは、とある郊外の城で……?
三人の男たちを中心に繰り広げられる、摩訶不思議な夢物語のような大冒険。
後に国を背負い立つ者たちの、前日譚。
たった一人の行方不明者を探すはずが、いつしか――
作者さまの別作品では悪者扱いされがちな王子の過去、そして彼の未来に想いを馳せる青春ストーリー。
彼らは本当にイケメンさんですよ(^^♪
ブロマンス、それは、男性の友情以上BL未満のもの。
私は、「ブロマンス」という単語の意味を知らなかった。
だから、この作品を読み始める時に、まずその意味をググった。そして理解した。
この作品は、作者様の他の作品にも登場するキャラクターのスピンオフ作品なのですが、それらを読んでなくても楽しめる作品です。
フレーヴァング王国の王子ヴィトセルクと美貌のハーフエルフのレヴァル。
そして従者アスート。
美しい男たちが妖しげで未知なる存在と戦う姿は、それはそれは情景が目に浮かんできて麗しい。
この作者様は、時として振り切りまくったコメディーも書きますが、こういった妖しい雰囲気のファンタジーを書くのもとてもお上手。
全体的に黒い靄がかかったような妖しげな世界観が、読むものを魅了します。
ブロマンス未体験の方も、ぜひこの作品でブロマンスを感じてみませんか?