最終話 等身大の大当たり

 その後、銀次は銀玉になり、パチンコ台の中で再現奮闘をし、ヘソの左側上で1000回目の静止状態となった。


おにアツだあああ――」


 エンマ様の一言の変化が銀次にも何かしらの影響を受ける形になったのだろうか。最後の山場で『鉄板』から『鬼アツ』へ。




――そして……ゆっくりと左下のヘソ横の零れ穴に落ちていった。




 液晶は停止状態を保っている……つまり、1000回目にして、初のハズレ――。


 ハズレルートを選択してしまった銀玉は転がり落ち、盤面の最下部にあるアウト口を通り、そのまま奈落の底に堕ちていった。


「嫌だ! 助けてくれ――」


 深い闇に飲み込まれていく銀次の断末魔だんまつまは、しば残響ざんきょうとなり、闇と溶け合うように消えていった。


「パチン!」


 エンマ様は指パッチンをすると、巨大パチンコ台が跡形も無く消え去った。裁判所は初めからエンマ様以外、誰も存在していなかったかのような静寂に包まれていた。


「結局のところ、銀次は999回、大当たりでは無く、意味を成さない小当たりを引き続ける形になってしまったな……。そして、千ハマり……。奴は現世でもあの世でも等身大の大当たりを引けず仕舞いか……」


 エンマ様は巨大パチンコ台のあった場所を哀れみながら一瞥いちべつした。そして、すぐにテーブルの上に置いてある、次に裁判を受ける魂の資料を手に取り、急いで目を通していった。


 一つ前の駄目人間が大ハマりしたせいで、時間が立て込んでしまったといわんばかりに。


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パチンコ玉に転生した無職のダメ人間、大当たりを狙う 酒絶 煙造 @ikousaa92

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