蒼失

木瓜

蒼失

テレビで流れる、誰かの訃報

気にもとめない、朝8時

人が行き交う、昼の街並み

何だか、胸を小さく刺した

秋の夕日に、心が凪いで

悲しくなった、16時

訳もわからず、涙が溢れ

孤独に震えた、深夜2時


いつも、何かに怯えてる

だから、今も、死にものぐるい


後ろから聴こえる足音に

追いつかれないように、走った

それは、別れの音

私を、喪う音



街で見かけた 金木犀

揺蕩う、あなたとリネンの香り

「明日、何しようかな」

吐き出すような、呟きに

ーそんなの、何だって

言葉を、呑んだ

エピローグが、頭を掠める

苦い想いは、花弁に隠した


後ろから聴こえる足音に

追いつかれないように、走った

それは、別れの音

私を、喪う音

後ろから聴こえる足音に

追いつかれないように、走った

それは、悲しい音

あなたを、失った音



「生きたい」

当たり前の事を叫んだ

あなたの姿は、とても綺麗で

「生きたい」

震える声は、空に刺さって

落ちた雨は、少し冷たい



後ろから聴こえる足音に

追いつかれないように、走った

それは、別れの音

私を、喪う音

後ろから聴こえる足音に

追いつかれないように、走った

それは、悲しい音

あなたを、失った音


必死に、手を伸ばす

あなたのいる、向こう側へ

音は、気付けば直ぐ横で

ああ、寂しいな

淡い、青が散った

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蒼失 木瓜 @moka5296

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