犬も喰わぬ(後半)


_____あれから経緯を大まかに話し、外の様子を少し伺うとすっかり外は暗くなってしまっていた。



『なるほど……そんなことが…でも落ち着いてよかった。もうここまで落ち着けば後は謝れば大丈夫だろう。ほら、新しいおしぼりだ』



話している最中に温かいおしぼりやらティッシュやら沢山お世話になってしまった。



『ありがとうございます。柚さん』


『あぁ、気にするな!……って、俺の名前、松高でそんなに有名だったのか!?』


『あ、いえ。違います、そのさっきコーヒーを淹れてくださった女性の方が言っていたのでもしかしたらと思って…』


面白い人だな、見た目とは違い豪快に話してくれる。こちらまで元気を分けてもらっているような……


『あ、そうかそうか……!ところで、俺は君の名前を聞いてもいいのだろうか?』


『あ、すみません。遅くなって、俺は氷室 葦吹です。葦吹と呼んでください』


『そうか!教えてくれてありがとう。ところでだ、葦吹……考えていたんだがな』


『はい』


『……俺は今日、思いつく限りで外に出てお見送りする仲のお客さんは1人しかいなかった。と思うのだが…』


しまった…。

恋人とは言っていたがまさか恋人が男だなんて思わないだろう。言ってしまおうか、でも……引かれてしまったら…?このお店が勇さんのお気に入りだったら…


考えていると新しい客が来たのか柚が席から立ち上がった。



『あ、…勇さんじゃないか!さっき買ったものを忘れていっただろう!恋人まで連れ帰り忘れるなんて…!まったく!』


名前を聞いて思わず席から立振り返るとそこには勇さんの姿があった。

柚さんが何を言っているのかいまいち理解できず目を白黒させていた。


『え…ゆずさ、…』


『次は2人で一緒にコーヒーでも買いに来てくれ!待っているぞ』


『なんで…』


『…葦吹くん、もう遅いから送る。柚、ごめんね…つい話し込んでケーキと恋人を忘れていくなんて…歳かな…』


そこから柚さんと勇さんは他愛のない会話を少し交した後、早々に柚さんや先ほどの店員さんに別れの挨拶を済ませて夜の道を歩いていた。もしや、知っていて……??と思うと、とてもじゃないがお店の人達の顔を見ることなんてできなかった。

勇さんの背中が少し寂しそうに見えて思わず空いている方の手を繋ぐ…。人の目なんて全く気にならなかった。


『……勇さん、すみませんでした。俺話も聞かずに一人で勝手に…』


『……あぁ』





やばい、嫌われた………??







『本当だよ。おかげで柚にお披露目する前に恋人がばれちゃった』


顔を上げるとそこにはいつものように頬を少し赤く染め、眉毛を下げて笑っている俺の大好きな勇さんがいた。

夜の街灯に照らされて、立ち止まる。俺は本当にこの人が好きだ。どうしようもなく、欲しい。抱きたい………。






『今日、勇さんが…欲しい』


『え、葦吹く…』


『親が将来、勇さんの勤めている会社と同系列のところに就職させたがっているので話を聞くついでにホテルで泊まるということにして連絡します』


『ちょっと、無茶じゃないかい!?いきなりすぎるよ…!』


『いや、ですか?』


『ぼ、僕は……ってちょっと!!』



金はいつも多めに財布に入れていたから母親にもばれずに済むだろう。ポケットからスマホを取り出し母親にメッセージを送ってからスマホの電源を消す。


『連絡しました、これで、良いですよね?』


『こうなったら聞かないんだから。こんな色々あった日に初めてのお泊りなんて………お母様へは後から僕も連絡を入れるからね?』



『はい、ありがとうございます』


微笑み、そのまま2人で手をつなぎながら歩いた。______意外と店から勇さんの家までの距離は近いため残念だが、すぐに到着した。白い外装なのにあまり時間を感じさせないきれいな一軒家だった。勇さんが家の鍵を開けるとアレクの元気な鳴き声が聞こえてくる。


『さあ、どうぞ……』


外から見たら白く暖かいイメージの家だったが中はシックで大人の男性の一人暮らしという言葉がぴったりだろう。黒いソファに腰かけるとアレクが尻尾をブンブンと振りながら近づいてきた。


____そこからは一緒に食事したり、ケーキを食べたり、お互い別々に風呂を済ませて……と、色々2人で過ごした。まるで新婚さんの気分だ。冷静を装ってはいるが、内心ドキドキが止まらない。着替えは制服以外ないので勇さんにバスローブをかりた。そのあとは寝室に招かれ、ベッドの上に二人して向き合い正座をする。少し暗いライトがお互いの緊張感を高める。


『……』


『……い、葦吹くん、その…本当にいいの?』


『俺はあなたがいいです』


手を握り真っ直ぐ勇を見つめる。


『そ、そっか…その、葦吹く』


『葦吹、って呼んでください』


勇さんをベッドに軽く押し倒す。

恥ずかしそうに目線をそらす勇さんが煽情的で、軽く触れる程度のキスをすると勇さんが静かに自分の名前を呼ぶ。


『あ、あの、い、ぶきく…』


『……何ですか?だから……っ、君付け禁止』


『…してある…う、後ろのじゅ、…んび』



……………は。


『め、めいわくかけたくなくてっ……わっ』


勇さんのバスローブを脱がせてから体勢をうつぶせにして臀部をいやらしくなぞる。俺がやりたかったのに……迷惑なんかじゃないのに。

中にローションを仕込んだのだろう、指を一本試しに入れてみると後ろは簡単に指を咥えこんで離さなかった。ぬちぬちと何回か出し入れを繰り返すといやらしい水温があたりに響く。初めてだろうからゆっくりと慣らしてあげたかった。


『ふっ、…グっ……ん、…』


『…』


自身のペニスは痛いほど張りつめているのに、指は3本以上は入る気がしない…。俺のは自慢ではないが…サイズが大きすぎるし、性行為自体慣れていないため勇さんの気持ちいいところが分からない…。自分と性行為をするには勇さんへの負担が大きすぎるのでは…、中を傷つけてしまったらどうしよう。


『勇さん、足開いてください。そう…』


内腿を優しくなでると。ふるッと切なげに震える萎えたペニスが顔を出していた。

やっぱりな…。これ以上無理はさせられない。


『…!?な、に…ンっ、…やめ、な…さ…あぁ…!!』


後孔から指を抜き取り、腰の後ろから手を回して右手でゆるゆると勇のペニスを扱く。少しづつ勃ち上がるペニスに先走りを絡めて優しく愛撫してやると背中がビクビクと反応している。ジュク、クチュ、といやらしく響く音は耳を犯した。左手では勇の胸の飾りをカリ、といじる。


『俺、もっと勇さんにふさわしい男になります…』


『ふっ…っ、………っ…////』


喘ぎ声をきかせまいと枕に顔を埋める勇。

これならいいだろう______



『ぁっ、…!』


『んっ、そ、勇さん。足閉じて。腰、掴みますから痛かったら言ってください…』


腰を振る。挿れてはいない_____所謂素股だ。これも列記としたセックスだろう。出し入れする度に色々な体液が混ざり合い、お互いの陰茎を刺激する。暖かくて何だか悪いことをしてしまっているような気にさせられる。がっしりとした腰、荒い息遣い、水音。全てが愛おしい。


『っ…、はぁっ、はっ…ぁ…』


『顔、そんなにっ、押し付けないで。声聞かせて…』


パチュ、と腰を動かし続けると中に仕込んでいたローションが泡立つ。奥をごすっと、刺激するように下腹部で後ろに圧をかけてやる。


『っ?!/////いれ、っ…て、な…のにぃ…きも、ち……』


後ろを振り向きこちらに蕩けそうな視線を送ってくる。コンコンされるのが気持ちいいのだろうか、素股でこれだけ感じているのだから、才能があるのかもしれない……腰を止め、そう考えていた瞬間だった______勇さんが自分から腰を振り始めのだ。


快楽に弱い身体はビクビクしながらもいやらしく欲望に忠実で、気づけば何も考えられなくなり、腰をただ一心に振り続ける猿にでもなったようだ。



『んっ…ぁ、んっ…///』


『っ、ふっ……勇さ、ん。エロッ……』


『ぃ、…わ、な…あぁっ…!♡』


『おく、早くコンコン出来るように、しますね?こうやってっ…、っ…』


『ぁあっ♡ん、…ぁああ!♡入口のこん、こっ、もす…ごぃ////』


脚がきゅっと締まり、痙攣している…。陰茎もビクビクしていたためイッたのだろう。だが自分はまだイッていない。早いな………。セックスできるようになったら抱き潰してしまおう。


『ほら、まだ終わって、ない。腰上げて、しっかり俺の事呼んで?勇さん、好きって言って…』


実を言うと自分も人のことを気にする余裕などなかった。ラストスパートに向けて、精子を出そうと自身の双球がグッ、と上がりイッたばかりの勇のペニスを刺激する。背中がしなり悲鳴にも似た声を上げる。


『めぇ…!!だ、めっ!イッ、ぁ…!イッた、ばっ……ふっ、ぁぁあ!やめ、んんんん!♡』


『好きって、っ言わないと___終わってあげません』


ごんっとまた後ろに圧をかける。


『す、きぃ…!ぁっ、…♡いぶ、き、いぶき、す、き♡イクっ……!イッちゃ…んっ……/////こ、んこん、ぁ、…だ、め!来ちゃうっ………!』


『俺も好き。勇さ、っ…出るっ…!』












___________その後は2人して自己嫌悪に陥り、これからはいきなり挿入させるのではなく前戯をしよう。嬉しくてつい行為に至ったが葦吹の規格外のサイズについての対策や前立腺など先に知識を頭に入れる方が先だと気づいたようだ。翌日は使ったシーツを葦吹がジャブジャブと洗いアレクの憐れみの視線を一心に受けていたらしい。



だが自己嫌悪に浸っている割には事後に2人で浴槽にゆっくり浸かり、見つめあったり楽しそうに夜を過ごしていたそうな…。





…こんな夫婦喧嘩は犬も喰わぬ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〜裏のセカイ〜 ガンジー @soreai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る