第7話 新たな父の疑惑

 それからしばらくして父からレターパックが届いた。薄っぺらい卒業文集のような本。表紙に「自分史講座 自分史作品集」と書いてある。父のページをめくる。

そこにはこう書かれていた。


 信じられないかも知れないが、忍者はいる。わたしは断言できる。なぜなら、わたしが忍者だからだ。今までそのことを家族にも内緒にしてきた。

 しかし、七十を越えた今、ここに記しておきたいと思うようになった。今のご時世、インターネットの動画で自分が忍者であることを明らかにし、忍者講座などをやっている者もいる。わたしとは流派の違う忍者ではあるが、その気持ちも分からなくもない……


 は? これって本当のこと?

嘘ならたちの悪い噓だと思った。でも、内容は至って大真面目だ。決して法に触れるようなことはしてないこと、忍者になったきっかけ、いまだに鍛錬していること、その心構え。忍者のくせで、ただ同じ方向を歩いているだけでも人に付けられていると勘違いしてしまうときがあること、そう思うとつい相手を巻いてしまうこと。おまけに、娘のわたしに全く忍者の素質がなく、自分の代で終わりにしようと決めたこと、そのわたしが小さい頃忍者になりたいと言い出して反対したこと、ボールを拾いに行って危うくトラックに轢かれそうになったときに助けたことが書かれている。

 なに、あれ、お父さんだったの?

 信じられない。

……でも、じゃあ、この間の図書館の帰りも?

 混乱しているようでそれは一本の線のようにつながっていた。

本当に父は忍者なのだろうか。

新しい父の疑惑である。

                                  (終)

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父の疑惑 @purate-ro

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